1998 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期ストレスラットの感情障害の生物学的モデルとしての可能性について(ラットの性差・種差についての検討および分子生物学的・行動科学的検討)
Project/Area Number |
09670994
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Research Institution | NAGASAKI University |
Principal Investigator |
辻村 徹 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (70236892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 雅希 長崎大学, 保健管理センター, 講師 (70264223)
中根 允文 長崎大学, 医学部, 教授 (80039833)
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Keywords | 感情障害 / 胎生期ストレス / 動物モデル / モノアミン受容体 / 行動科学 / 抗うつ薬 |
Research Abstract |
ラットにおいては胎生後期は胎仔の中枢モノアミン系ニューロンの形成に重要な時期であり,我々はこの時期に受けたストレスによる神経系の機能異常状態が感情病の生化学的脆弱性モデルと成り得るのではないかと考え,種々の検討を行った。行動科学的検討として,自発行動量の測定を本研究費により購入したケージ設置型活動量測定装置(LOCOMO)を用いて行った。生後に特別のストレスを加えない状態での自発行動量は,雄性ラットにおいて明期の行動量が胎生期ストレス群で増加し,LD比(明期行動量と暗期行動量の比)はストレス群で有意な高値を示すなど,胎生期ストレス群では明期,暗期の行動量の差が小さくなるという結果が得られた。これは,睡眠の中断を反映した結果とも考えることができる。また,成熟後に予測不可能なマイルドなストレス(chronic variable stress,CVS)を14日間負荷した後にオープンフィールドテスト,自発行動量の測定を行った。自発行動量は,CVS負荷により,雄性ラットにおいて胎生期ストレス群の夜間行動量は対照群と比較して減少傾向,あるいは有意な減少が長期間(CVS負荷後14週後)に渡って認められた。オープンフィールドテストでは,CVSを加えない群との比較では,胎生期ストレス群がより「不安」の評価が高かった。 これまでの結果より,本胎生期ストレスラットは,中枢モノアミン受容体のup regulation,抗うつ薬の反復投与に対するβ受容体の過感受性,HPA系の機能亢進,自発行動量のリズムの障害,アンビュロメーターでとらえられた暗期行動量の変化に対する抗うつ薬の効果などの所見から,感情病の生化学的脆弱性モデルラットとなりうることが確認された。さらに,胎生期ストレスラットに生後,比較的軽微なストレス処置を加えることにより感情病病態モデルを作成することが可能になり,感情病発症のプロセスの解明に貢献できると考えられる。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] T.Tsujimura et al: "Platelet serotonin 2A receptor binding sites in affectire disorclers:A quantitatire receptor antoradio graphic study with [^<125>I]LSD" Acta Med.Nagasakiensia. 43. 48-56 (1998)
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[Publications] 辻村 徹 他: "胎生期ストレス負荷ラットにおける生後に加えられたchronic Variasle stress負荷の行動に及ぼす影響について" 精神薬療基金研究年報. 第31集(印刷中). (1999)
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[Publications] 辻村 徹 他: "胎生期ストレス負荷ラットにおける生後ストレス負荷の自発行動量に及ぼす影響について" 日本神経精神薬理学雑誌. (印刷中). (1999)
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[Publications] T.Tsujimura etal: "The effects of prenatal stress on behaviors and central serotonin 1A receptors in Wistar rats." Psychiat.and Clinical Neurosci. 52. S13 (1998)
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[Publications] T.Tsujimura et al: "The effects of prenatal stress on the beharior and mcroauiregic neuronal receptors of Wistar rats" 21st CINP congress. 395 (1998)
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[Publications] 冨松眞之 他: "胎生期ストレス負荷による行動科学的変化について" 精神薬療基金年報. 第29集. 109-115 (1998)
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[Publications] T.Tsujimura et al: "The effects of prenatal stress on locomotor acrtivities in wistar male and female rats" Psychiat.and Clinical Neurosci. 51・1. S97 (1997)
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[Publications] T.Tsujimura et al: "Platelet serotonin 2 receptor binding in affective disorders." Psychiat.and Clinical Neurosci. 51. S29 (1997)
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[Publications] 冨松眞之 他: "妊娠期ストレスと感情病脆弱性との関連について-Wistar系ラット,WKYラットの比較" 精神薬療基金年報. 第28集. 125-132 (1997)
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[Publications] 中島 聡 他: "妊娠期ストレスが仔ラットの行動に及ぼす影響" 日本神経精神薬理学雑誌. 17・6. 283 (1997)