1999 Fiscal Year Annual Research Report
記憶・認知に基づく不安の生物学的発現機序に関する電気生理学的・行動薬理学的研究
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09671012
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
笠茂 公弘 日本大学, 医学部, 講師 (90204370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 卓也 日本大学, 医学部, 教授 (40014203)
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Keywords | ラット / 恐怖条件付けストレス / セロトニン1A受容体 / 海馬CA1錐体細胞 / 細胞外活動電位記録 / セロトニン / 電気生理 / 行動薬理 |
Research Abstract |
記憶・認知に基づく不安の動物モデルのひとつに、ラットの恐怖条件付けストレス(CFS)により誘発されるすくみ行動がある。この不安・恐怖行動の発現に海馬が重要な役割を果たすとことが、破壊実験から示されている。本年度は、無麻酔・無拘束のラットを用い、CFS誘発性の不安・恐怖の発現・減弱・消失と海馬CA1錐体細胞の自発発火活動の関連について検討した。実験にはWistar系成熟雄性ラットを用いた。電極植え込み手術後、最低7日間の回復期をおいた。その後、ショックケージにラットをおき、その四肢に2.5mAのスクランブルショックを与えた。電撃の持続時間は30秒で刺激間隔を5-55秒として5分間に5回負荷した。この条件付けを2日連続で行い、最終条件付けの24時間後に、錐体細胞の発火活動と行動の観察を行った。ホームケージ内で明瞭な発火活動を記録した後、ショックケージにラットを移動すると1分以内にすくみ行動が観察された。すくみ行動は、移動後10分程度は続くが、30分以上は持続しなかった。ホームケージに置かれている時期とショックケージの中ですくみ行動のない時期の錐体細胞の発火頻度は同一だった。すくみ行動中の発火頻度は、これらに比べ有意に低かった。選択的セロトニン1A受容体拮抗薬のWAY-100635(0.2mg/kg,s.c)の前投与は、すくみ行動に影響を及ぼさなかったが、発火頻度の減少を解消した。以上から、すくみ行動にともなう海馬CA1錐体細胞の自発発火頻度の低下は、内因性セロトニンによるセロトニン1A受容体刺激が増加する結果生じると考えられた。すくみ行動中は、海馬CA1領域で細胞外セロトニン濃度が上昇すると考えられた。
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