Research Abstract |
糸球体内皮細胞(GEN)によるNOの産生・放出に及ぼす伸展刺激の影響を検討した。伸縮性の高いシリコン膜上に培養したGENを,シリコン膜とともに10%,20%,30%の各伸展率にて24時間静的に伸展し,ecNOSの蛋白レベルの発現をWestern blot法にて非伸展GEN(コントロール)と比較した。その結果,GENに対する24時間の静的伸展(static stretch)刺激が,0〜30%の伸展率の間で伸展率依存的にecNOSの蛋白レベルを減弱させることが明らかにされた。そこで次に,伸展刺激によってGENのNO産生が実際に低下するか否かを検討した。あらかじめ種々の期間(2分,0.5,1,3,6,12,24,48,72時間)30%の伸展刺激を加えたGENに,アセチルコリンやブラジキニンを添加し,細胞内cGMP含量をELISA法にて測定し,それぞれ非伸展GENと比較した。その結果,24時間の伸展刺激をうけたGENでは,アセチルコリンによる細胞内cGMP含量の増加が,非伸展GENと比較し明らかに抑制されていた。これらの成績から,静的伸展刺激をうけたGENではecNOSの発現が低下しており,アセチルコリンなどの刺激によるecNOSを介したNO産生が抑制されている可能性が示唆された。来年度は,伸展GENの上清中に産生・放出されたNOの濃度を,electron paramagnetic resonanceまたはchemiluminescence(他施設の測定機器を利用)を用いて測定し,より直接的なNO産生の低下を証明したいと考えている。さらに,Northern blot法,核run-off assay,転写阻害剤(actinomycin D)の投与によるecNOS mRNAの半減期の測定などを行い,伸展GENにおけるecNOS蛋白の発現低下の機序を解析するとともに,ecNOSの発現低下が,GENのICAM-1,MCP-1,M-CSFの発現強度やマクロファージに対する接着性に,またメサンギウム細胞の増殖能や細胞外基質産生能に及ぼす影響を解析したい。
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