1997 Fiscal Year Annual Research Report
Proton pump inhibitorを用いての新しい消化器癌治療戦略
Project/Area Number |
09671290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
太田 哲生 金沢大学, 医学部, 講師 (40194170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 正都 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (60224705)
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Keywords | Proton pump inhibitor / Bafilomycin A1 / 消化器癌 / 膵癌 |
Research Abstract |
癌細胞が円滑に増殖、浸潤していくには至適環境(すなわち、至適pH)が重要であり、この至適pHをコントロールするものとして最近 vacuolar type proton pump(V-ATPase)が注目されている。そこで本年度は、(1)分化度の異なった6種類のヒト膵癌細胞株でのV-ATPaseの発現を蛋白レベルならびにmRNAレベルで調べること、(2)V-ATPaseが癌細胞の浸潤能に及ぼす影響をみること、の2課題について研究したので、その成績を報告する。 1)ヒト膵癌細胞株での V-ATPaseの発現について:使用した膵癌細胞株は、Capan-1(高分化型腺癌)、BxPC-3(中分化型腺癌)、Panc-1(低分化型腺癌)、MIAPaCa-2(未分化癌)の4種類である。mRNAレベルでの発現はヒト 16-kDa subunit のcDNA塩基配列より特異的 primerとprobeを作製してRT-PCR Southern blotting をおこなって検討した。また蛋白レベルでの発現は、V-ATPaseの16 kDa subunitに対する抗血清を用いてLSAB法にて染色した(Ohta et al.,Br J Cancer,73: 1511-1517,1996)。その結果、分化度とは関係なくいずれの膵癌細胞株はmRNAおよび蛋白レベルで V-ATPaseを過剰に発現していた。 : 2)Bafilomycin A1による癌細胞の浸潤抑制効果について:MATRIGEL invasion chamberを用いて V-ATPaseの specific inhibitorである bafilomycin A1の浸潤抑制効果について検討した。すなわち、種々の濃度のbafilomycin A1(10nM-10 μ M)で2時間前処理し、その後上室には 1x106個/mlに調整した細胞県懸濁液を各200 μ lずつ、下室にはケモアトラクタント溶液として培養上清を入れ、細胞のviabilityが損なわれない6時間培養後に評価した。その結果、Capan-1,BxPC-3,Panc-1では10nMより、またMIAPaCa-2では100nM以上で濃度依存性に浸潤抑制効果が観察された。 以上の成績より、V-ATPaseが癌の浸潤に重要な役割を演じていることが示唆された。
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