Research Abstract |
今年度は,(1)悪性脳腫瘍計12例の同一患者で,2回の手術が行われ,しかも2回とも同じmonostemline cellからなる腫瘍5例(膠芽腫3,悪性髄膜腫2)と再発時には異なったstemline cellからなる腫瘍7例(膠芽腫4,悪性髄膜腫1,脳転移1,胞状奇形癌1)について,初回治療後の再発腫瘍内に発現する各治療抵抗性因子(GST-π,Cu/ZnSOD,bcl-2)の出現程度と再発後の憎悪までの期間との関係,(2)ラジカル増感剤としてのビタミンK3の殺細胞ラジカル効果のin vitro研究を検討した。(方法)(1)昨年と同様の染色法を用い,陽性細胞の発現の程度を,全体の細胞に対する陽性細胞の割合によって,4段階にスコア分類した。stemlineの分類はG2M DNAploidyにおけるtetraploidy patternを用いた。(J Neuro-oncol 26:1-9,1995)。治療予後は,再再発までの期間や画像でTTP(time to tumor progression)評価した。(2)ヒトグリオーマ細胞株を用い,1)vitaminK3のラジカル増強効果を細胞致死効果にて定量的に評価し,vitaminK2と比較検討し,2)殺細胞効果の機序をDNA ladder形成能で検討した。3)ハブ毒素の蛋白分画とラジカル効果増強との関係を検討し,ラジカル増強効果を有する蛋白分画の同定を行った。(結果及び考察)(1)1.GST-piの発現は,膠芽腫において高発現している例が再発後のTTPが短い傾向にあったが一定した結果が得られなかった。2.bcl-2に於いては,神経膠腫,髄膜腫共に再発腫瘍組織での,初回手術組織に比し高発現はTTPが短い。3.神経膠腫に於いて,単一クローンからなる腫瘍の治療予後は,bcl-2発現にかかっており,それら腫瘍の場合には,集学的な治療で,徹底的に行うことが必要である。(2)1.vit.K3は濃度依存的に細胞増殖抑制効果を認め,vit.K2よりも効果は強い。2.それらの殺細胞機序はFas/APO-1発現を介したアポトーシスを示唆した。3.vit.K2は,Fas/APO-1以外の他の機序によるアポトーシスと示唆された。(3)ハブ毒素は,濃度依存的な細胞増強抑制効果を認め,細胞内のoxygen radical,DNA断片化を認め,H33258染色陽性率も高かった。細胞周期の検討ではG0/G1期に集積効果を示した。約4万D付近の分子量に殺細胞効果が見られた。 今後さらに,これら抵抗因子の発現機序及び有効に活性酸素を生成する物質を検索・解析研究しその対策にスカベンジャーとの相互作用や活性酸素生成物質の有効な使用法を定量的解析も含めて研究する必要がある。
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