1997 Fiscal Year Annual Research Report
虚血脳における神経栄養因子の果たす役割について(脳高次機能及び神経再生の面に関して)
Project/Area Number |
09671426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
久門 良明 愛媛大学, 医学部, 助教授 (80127894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大上 史朗 愛媛大学, 医学部, 助手 (70213626)
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Keywords | 脳虚血 / 神経栄養因子 / 脳高次機能 / 神経再生 / 毛様体神経栄養因子 / 視床 |
Research Abstract |
ラット中大脳動脈(MCA)閉塞モデルでは、患側の皮質梗塞とともに視床萎縮が生じ、脳高次機能障害の起こることが報告されている。そこで神経細胞の突起伸展・生存および機能維持に関与する毛様体神経栄養因子(CNTF)を投与し、虚血脳に対する効果について検討した。 高血圧自然発症ラットのMCAを永久閉塞し、埋め込み式の注入ポンプを用いて、CNTFを虚血直後より虚血後28日目まで脳室内に持続注入(240ng/日)し、モリス水迷路試験による空間認知能と組織学的変化を検討した。対照はvehicle脳室内注入群とした。また視床でのGAP-43発現へのCNTFの影響も観察した。 その結果、(1)水迷路試験でプラットホームへの到達時間は、2週目は、CNTF投与群(n=6)では1日目;89±2.5・2日目;59.9±19.8・3日目;35.9±16.1・4日目;21±12.5、対照群(n=6)では85.8±7.2・77.9±13.3・74±20.7・56.7±22.4と3・4日目で有意に短かかった。また4週目は、CNTF投与群では1日目;38.1±19.2・2日目:30±19.2・3日目;17.4±7.7・4日目;11.9±5.9、対照群では70±17.3・50.9±18.4・37.6±19・23.5±12.2と、1・2・3日目で有意に短縮された。(2)術後4週目の組織学検討では、半球面積比(患側/非患側)は、CNTF投与群;75.6±3.3%・対照群;68.8±2.8%、視床面積比(患側/非患側)は、CNTF投与群;89.8±3.4%・対照群;80.6±3.3%、視床生存神経細胞数(0.1mm^2当り)は、CNTF投与群;48±9.6%・対照群;11.3±7.9%であり、CNTF投与群にて、梗塞範囲は縮小し、視床生存神経細胞数は増加し、その結果視床萎縮も軽減された。(3)CNTF投与により視床におけるGAP-43の発現は抑制されたが、CNTFにより視床神経細胞死が防止されたためと考えられた。 したがって、CNTF投与により、脳虚血のために生じる神経細胞死が抑制され、空間認知能障害の改善が得られることが示された。今後は、CNTFの虚血脳に対する作用機序について、さらに検討する。
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[Publications] Watanabe H., Kumon Y.et al.: "Protein synthesis inhibitor transiently reduces neuronal death in the thalamus of SH-SP rats following cortical infarction." Neuroscience Letters. 233. 25-28 (1997)
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[Publications] Watanabe H., Kumon Y.et al.: "Changes in protein synthesis and calcium homeostasis in the thalamus of SH-SP rats with focal cerebral ischemia" Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism. (in press). (1997)