1997 Fiscal Year Annual Research Report
骨肉腫におけるp53発現制御によるシスプラチン耐性の克服
Project/Area Number |
09671479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
土屋 弘行 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (40227434)
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Keywords | Osteosarcoma / p53 / Cisplatin / Caffeine / Synergistic effect |
Research Abstract |
我々は、本来シスプラチン感受性のヒト骨肉腫細胞株に対してシスプラチンを持続接触させてシスプラチン耐性株を得た。シスプラチンに対しては約6.7倍、プラチナ製剤であるカルボプラチンにも交叉耐性を示したが、他の抗ガン剤に対する多剤耐性は認めなかった。薬剤耐性機序として細胞内のプラチナ濃度の取り込み減少がシスプラチン耐性骨肉腫に認められ、従来と異なりシスプラチン接触後12時間から24時間にかけて有意に減少するという新たな知見を得た。 次いで、DNA修復阻害剤であるカフェインによるシスプラチンの殺細胞作用の増強効化とp53蛋白との関係についてシスプラチン耐性株と感受性株で検討した。カフェインはシスプラチン耐性株ではシスプラチンとの相乗効果を発揮しなかった。感受性株ではシスプラチンにより誘導され発現したp53蛋白をカフェインが抑制していたが、耐性株では、p53蛋白の誘導もカフェインによるDNA合成抑制も呈さなかった。更に、耐性株ではp53蛋白は野生型ながら感受性株の約半分に発現量が減少している知見を得た。以上より、野生型p53蛋白の発現量がシスプラチン感受性に重要な役割をになっていること、シスプラチンに対する初期の感受性の有無がカフェインの効果を予知しうる因子であると我々は考えている。 一方、野生型p53蛋白以外に変異型p53およびp53の欠失したヒト骨肉腫細胞株においてもカフェインによるシスプラチンの増強効果の有無を検討した。予想どうりカフェイン添加による殺細胞相乗効果は認められなかった。カフェインはシスプラチンにより誘導され発現したp53蛋白を抑制していたが、元々機能不全の故DNA合成の停止を呈さないと考察している。したがって、今後の方針として変異型p53およびp53の欠失した骨肉腫細胞株に野生型p53遺伝子を導入することよりカフェイン添加による相乗効果作用を期待し得ると考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 土屋弘行: "野生型p53発現骨肉腫細胞株におけるcaffeineによるcisplatin増強効果機序の検討." 日本整形外科学会雑誌. 70(6). S997 (1996)
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[Publications] 土屋弘行: "野生型p53発現ヒト骨肉腫細胞のにおけるcisplatin感受性の差異によるcaffeineのcisplatin増強効果の有無に関する検討." 日本整形外科学会雑誌. 70(8). S1212 (1996)
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[Publications] 土屋弘行: "ヒト骨肉腫細胞株におけるp53蛋白を標的としたcaffeineによるCDDP増強効果治療." 日本癌治療学会誌. 31(8). 712 (1996)
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[Publications] 土屋弘行: "骨肉腫に対するカフェイン併用化学療法の分子生物学的検討-カフェインによるシスプラチン増強効果機序におけるp53蛋白の役割." 臨床整形外科. 32. 31-37 (1997)
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[Publications] H.Tsuchiya: "Classification in terms of expression of p53 in cisplatin enhancement of caffeine as a biochemical modulator on human osteosarcoma cell lines." Transaction books,9th international symposium on limb salvage,New York. 141 (1997)
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[Publications] H.Tsuchiya: "Differences in cytocidal enhancement by caffeine between cisplatin sensitive and resistant human osteosarcoma cells with wild-type p53." Transaction books,9th international symposium on limb salvage,New York. 180 (1997)