Research Abstract |
ラット用の体幹ジャケットを作製し,Wistar系ラット10匹およびコントロール・ラット10匹に装着して体幹を吊り上げ後肢を地面より浮かして下肢筋の無負荷を生じさせた.この操作にて下肢筋の廃用性筋萎縮を作製することができた.実験開始後2週目の時点で下肢筋を摘出し,液体窒素で冷却したイソペンタンで筋を凍結し,後日,クリオスタットを用いて10ミクロンの連続標本を作製した.HE染色,acid-phophatase染色,SOD,calpain,slow myosin,fast myosinのmonoclonal抗体(ABC法)を用いた免疫反応を試み,筋壊死および筋タイプとSOD,calpainの発現状況を観察した.壊死筋線維(本/匹;実験群/対照群))は,大腿直筋深部0/0,大腿直筋浅部0/0,内側広筋深部1.3/0.1,内側広筋浅部0/0,外側広筋深部1.4/0.1,外側広筋浅部0/0,中間広筋1.7/0,腓腹筋内側深部0.3/0.1,腓腹筋内側浅部0/0,腓腹筋外側深部0.5/0.1,腓腹筋外側浅部0/0,ヒラメ筋1.9/0,であった.ただし,実験群のラットで実験開始時よりも体重が減少したラットがあるため,るいそうの要因が加わっている可能性がある.壊死部はacid-phophatase染色で反応が陽性であった.また,一部の壊死筋線維ではSODが陽性であり,酸化的ストレスの関与が示唆され,calpainが陽性のものもあった.この事実により廃用により何らかの酸化的ストレスの起点が生じ, calpainの活性が増加して壊死が引き起こされたと解釈できる.壊死線維ではslowmyosinとfast myosinともに陰性であったが,壊死が生じつつある筋線維ではslow myosinが陽性の筋線維もあり,タイプ1線維にこの壊死が生じやすいことが予想される.しかし,現在の段階では必ずしも一定の結論が得られていないので,次年度は対象数を増やすこと,るいそうの影響を除くため後肢懸垂後に体重が減少していないラットを選別すること,酸化的ストレスに関してはα-tocopherolを投与したラットの解析と抗HNE抗体の発現の有無を評価して最終的結論を検討する予定である.
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