1997 Fiscal Year Annual Research Report
燐酸カルシウム結晶法によるカルシウム結合蛋白の研究
Project/Area Number |
09671634
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岩田 英信 愛媛大学, 医学部, 教授 (40108379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊勢田 徳宏 愛媛大学, 医学部, 助手 (50260386)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / カルシウム結合蛋白 / 燐酸カルシウム(アパタイト) / 人工尿 |
Research Abstract |
燐酸カルシウム結晶は陽性および陰性に荷電したほとんどの蛋白と静電気的に結合することが知られており、蛋白の分離精製に応用されている。ところが尿中で析出させた燐酸カルシウム結晶にはα2-HS糖蛋白およびプロトロンビンとその分解産物などのカルシウム結合蛋白が選択的に結合している。今年度はこの現象を人工的な電解質溶液で再現する場合の条件について研究を行った。 1,アジ化ソーダの存在下に蓄尿した健康成人男子尿を分画分子量1万の膜で限外濾過濃縮し、Isaacsonの人工尿(燐酸ナトリウム34mM/l、クエン酸ナトリウム2.7mM/l、塩化カルシウム5mM/lほかを含みpH5.6:Invest.Urol.5:406,1968)に加え、撹拌しながらpH7.4になるまで水酸化ナトリウム溶液を滴下して燐酸カルシウム結晶を析出させた。結晶に結合した蛋白を分析したところ、尿中で析出させた燐酸カルシウム結晶と同様、α2-HS糖蛋白およびプロトロンビンとその分解産物などが選択的に結合していた。 2,Isaacsonの人工尿組成の内、燐酸ナトリウム34mM/l、クエン酸ナトリウム2.7mM/l,塩化カルシウム5mM/lのみを含みpH6.0の溶液(A)でも同じ結果が得られ、燐酸ナトリウム10mM/l、クエン酸ナトリウム2mM/l、塩化カルシウム5mM/lを含みpH6.0の溶液(B)でもほぼ同じ結果が得られた。 3,溶液(B)からクエン酸ナトリウムを除くと非特異的な結合が急激に増加し、この傾向は燐酸ナトリウム濃度が低下するほど強まり、プロトロンビンとその分解産物の吸着は確認できなくなった。 以上の結果から、人工的な電解質溶液でも尿中で析出させた燐酸カルシウム結晶で認めた尿中カルシウム結合蛋白の選択的結合が再現可能であり、溶液中のクエン酸の存在はこの現象に必須であることが明らかになった。
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