1998 Fiscal Year Annual Research Report
膀胱癌発生危険因子の作用機序の分子生物学的解明:チトクロームP450を中心として
Project/Area Number |
09671641
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 啓介 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (70137230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今岡 進 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60145795)
舩江 良彦 大阪市立大学, 医学部, 教授 (00047268)
池本 慎一 大阪市立大学, 医学部, 助手 (90168154)
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Keywords | チトクロームP450 / CYP4B1 / 膀胱腫瘍 / competitive RT-PCR / 末梢血リンパ球 |
Research Abstract |
膀胱癌はいわゆる発癌物質によって引き起こされる典型的な化学発癌と考えられている。化学発癌の最初の過程には、多くの場合チトクロームP450(P450)という酸化酵素が関与していると考えられている。本研究では膀胱癌の発症機序解明の一環としてP450を中心に検討した。 P450には、外界からの異物を酸化分解して無毒化するという働きがあるが、時として逆に活性化してしまう場合がある。化学発癌物質はP450によって代謝的に活性化されてしまう物質である。膀胱癌を引き起こす化合物として、これまでベンチジン、ナフチルアミンなど芳香族アミン類が報告されているが、これらを活性化するP450分子種については、明らかにされていなかった。本研究では、これらのアミンを変異原物質に活性化する分子種を同定し、これがCYP4B1というP450であることを明らかにした。さらに、免疫組織学的検討から、CYP4B1は膀胱の粘膜上皮細胞に局在することが明らかにした。しかも、非膀胱腫瘍患者より膀胱腫瘍患者の膀胱に顕著に高いCYP4B1の発現が見られた。このことは、尿中に含まれる癌原性芳香族アミン類が膀胱粘膜の上皮細胞で活性化され、変異原性を示す可能性を示唆している。 しかも、CYP4B1の発現量が高い方が、膀胱癌の発症率が高いことから、CYP4B1の発現が膀胱癌のリスクファクターになりうることを示唆している。 この結果をふまえてさらに臨床的に発展させるべく、検討を加えた。すなわち、末梢血リンパ球に発現しているCYP4B1量の測定法を開発し、膀胱に発現しているCYP4B1量と比較したところ、相関があることを見いだした。この方法を用いて、非膀胱腫瘍患者と膀胱腫瘍患者のリンパ球におけるCYP4B1発現量を比較した。その結果、膀胱腫瘍患者のほうが高い傾向にあった。以上本研究によって開発された方法およびそれを用いて得られた結果は、膀胱癌のリスクファクターを解析するうえで極めて有効であると考えられる。
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