1999 Fiscal Year Annual Research Report
パルボウイルスB19による胎児水腫発症機構としてのアポトーシスの分子生物学的解析
Project/Area Number |
09671658
|
Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
八重樫 伸生 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (00241597)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 茂樹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10168651)
|
Keywords | パルボウイルス / B19 / 母子感染 / 胎児水腫 / アポトーシス / 死産 |
Research Abstract |
1、B19ウイルスの非構造蛋白NS1を誘導発現する赤芽球系細胞株を樹立し、NS1蛋白が直接アポトーシスを誘導することを示した。次に遺伝子組み替えによってNS1蛋白がATP結合能を失うように変異NS1遺伝子を作製し、同様な方法で培養細胞に遺伝子導入し、変異NS1蛋白を誘導発現する細胞株も樹立した。その結果、変異NS1蛋白が発現しても細胞はアポトーシスを起こさなかった。すなわちアポトーシス誘導にはNS1蛋白のATP結合部位が重要であることを示した。さらに上記細胞にアポトーシスを抑制する遺伝子Bcl-2を遺伝子導入したところNS1によるアポトーシス誘導が顕著に抑制された。 2、胎児水腫で死産となった10症例の剖検組織をTUNEL法で染色したところ、血管内に陽性細胞が散見された。組織をTUNEL法と抗B19単クロン抗体で二重染色することによって感染細胞がアポトーシスを起こすことを証明した。次にアポトーシス誘導の分子機構を解明する目的で、組織を種々のアポトーシス関連因子に対する抗体を用いて免疫染色した。カスペース3に対する抗体では感染細胞は陽性となったが、カスペース1に対する抗体では陰性であった。NS1蛋白発現細胞でもやはりカスペース3のみが陽性となり、この細胞培養系にカスペース3阻害剤の添加によってアポトーシスが抑制された。このようにB19感染によって起こる赤芽球のアポトーシス機構にはカスペース3が重要な役割を担っていることが示された。一方FASやパーフォリン、グランザイム、Bcl-2に対する抗体では陽性所見はみられなかった。 以上の研究はB19によって起こる赤芽球の破壊がアポトーシスによることを証明しその機構を明らかにした。今後胎児水腫発症の予防法や治療法の確立に大いに貢献することが期待される結果といえる。
|
Research Products
(17 results)
-
[Publications] Yaegashi N.et al.: "The incidence of, and Factors Leading to, Parvovirus B19-related Hydrops Fetalis Following Maternal Intection"J. Infect.. 37. 28-35 (1998)
-
[Publications] Yaegashi N.et al.: "Serologic Study of Human Parvovirus B19 Infection in Pregnancy in Japan"J. Infect.. 38. 30-35 (1999)
-
[Publications] Yaegashi N.et al.: "Parvovirus B19 Infection Induces Apoptosis of Erythroid cells in vitro and in vivo"J. Infect.. 39. 68-76 (1999)
-
[Publications] Moffatt S.et al.: "Human Parvovirus B19 NS1 Protein Induces Apoptosis in Erythroid Lineage cells"J. Virol.. 72. 3018-3028 (1998)
-
[Publications] Yaegashi N.et al.: "Pathogenesis of Nonimmune Hydrops Fetalis caused by Intrauterine B19 Infection"Tohoku J. Exp. Med.. 190. in press (2000)
-
[Publications] 中里 浩樹、他: "妊婦におけるヒトパルボウイルスB19抗体陽性率の変化"周産期医学. 28. 1241-1243 (1998)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "パルボウイルスB19の母子感染-胎児水腫の発症機構を中心に-"日母産科婦人科学会雑誌. 50. 569-580 (1998)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "パルボウイルスB19母子感染における胎児傷害機構"産婦人科の実際. 47. 1169-1176 (1998)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "妊婦とリンゴ病(パルボウイルス感染症)"産婦人科の実際. 48. 85-89 (1999)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "パルボウイルスB19感染細胞の電子顕微鏡像"東北臨床超微形態懇話会記録. 20. 23-25 (1998)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "パルボウイルスB19"産科と婦人科. 66. 385-393 (1999)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "感染症(パルボウイルスB19,サイトメガロウイルス)合併妊婦の管理"日本産科婦人科学会雑誌. 51. N-86-N-102 (1999)
-
[Publications] スタンレー,モファット他: "ヒトパルボウイルスB19の病原性発現分子機構"日本輸血学会雑誌. 44. 349-351 (1998)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "ペリネイタルケア1999 新春増刊"メディカ出版. 10 (1999)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "新女性医学大系10 女性と感染症"中山書店. 7 (1999)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "電子顕微鏡 ウイルス学"朝倉書店(印刷中). (2000)
-
[Publications] 八重樫 伸生: "図説産婦人科VIEW:母子感染"MEDICAL VIEW(印刷中). (2000)