1998 Fiscal Year Annual Research Report
顆粒膜細胞増殖に関わる細胞内刺激伝達機構の生化学的並びに分子生物学的研究
Project/Area Number |
09671711
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田辺 清男 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10101916)
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Keywords | 卵胞刺激ホルモン / 顆粒膜細胞 / mitogen-activated protein kinase / c-fos / jun B / protein kinase C / protein kinase A |
Research Abstract |
G蛋白と結合した受容体を有するFSHは、protein kinase A(PKA)系あるいはPKC系を介してその生物学的効果を発現するとされている。そしてステロイド産生にはPKA系が関与し、一方我々の研究より顆粒膜細胞の増殖にはPKC系が重要であることが示唆されている。しかし細胞増殖には一般にtyrosine kinase活性を有する受容体からシグナルを受け、その後Mitogen-activated protein kinase(MAPK)を経た刺激伝達系が重要であることが示されているが、顆粒膜細胞ではこの経路はまだまったく明らかにされていない。そこで本研究では、昨年に引続き、FSHよりMAPKに至る経路と、さらにFSHからc-fosならびにjunB遺伝子発現に至る経路を明らかにすることを目的とした。 ブタ卵巣より顆粒膜細胞を採取して培養し、培養顆粒膜細胞にFSH、PKC stimulator(PMA)、PKA stimulator(forskolin)をそれぞれ単独で、さらにFSHと共にPKC inhibitor(stau-rosporine)、PKA inhibitor(Rp-cAIAP)、さらにtyrosine kinase inhibitor(genistein)を種々の濃度で添加して培養した。(1)myelin basic proteinを基質としてMAPK活性を測定したところ、MAPK活性はPMAではFSHとほぼ同様に有意な上昇がみられたが、forskolinでは上昇せず、さらにFSHによるMAPK活性の増加はstaurosporineにて濃度依存性に抑制されたが、Rp-cAMPで抑制されなかった。また、genisteinでも有意な抑制はみられなかった。(2)同様にして、c-fosとjunBのmRNAの発現を測定したところ、PMAにて両者とも有意に発現は増加したが、forskolinでは発現の上昇はみられず、さらにFSHによる両mRNAの発現はstaurospo-rineにて有意に抑制されたが、Rp-cAMPでは有意ではなかった。 以上の成績より、FSHよりMAPKおよびc-fosとjunB遺伝子に至る経路はいずれもPKA系ではなくPKC系が重要な役割を担っていることが、初めて明らかとなった。
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