1998 Fiscal Year Annual Research Report
切迫早産薬物療法におけるオキシトシン拮抗剤の臨床応用に関する研究
Project/Area Number |
09671725
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
瓦林 達比古 福岡大学, 医学部, 教授 (30142350)
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Keywords | 切迫早産 / 陣痛発来 / オキシトシン / オキシトシン受容体 / プロゲステロン / オキシトシン拮抗剤 |
Research Abstract |
オキシトシンは、下垂体後葉から放出されるペプチドホルモンであり、強力な子宮収縮作用がある。従って、産科臨床においては陣痛の誘発や促進に日常使用されていて、その効果については多くが体験している事実である。作用機序に関しては、子宮筋細胞膜のカルシューム(Ca^<2+>)チャンネルを介した細胞外から細胞内へのCaイオンの流入や、細胞内貯蔵部位からCaイオンの遊離により収縮を惹起すると考えられている。一方、オキシトシンは陣痛の発来にも強く関与し、これは未熟児の出生で医学的、かつ社会的に問題になっている早産陣痛発来も同様に考えることが出来る。そこで本研究では、ラットをモデルとしてオキシトシンの正常および早産陣痛発来に関連した機能的役割を明らかにし、同時にそれらの陣痛に対するオキシトシシ拮抗剤の効果について検討した。ラット早産モデルは、両側卵巣摘出後にエストラジオールを投与する事によって作成した。結果は次の通りであった。1,正常陣痛発来ラットにおいて、子宮筋の[^3H]オキシトシン結合部位数は妊娠22日に急速に増加した。2、血液中のプロゲステロンは反対に急速に減少した。3、循環血中のオキシ1・シンは陣痛発来時に急速に増加した。4、早産モデルにおいても、血漿中のオキシトシン濃度と受容体量は正常陣痛発来と同様の変化を見た。5、非ペプチド型オキシトシン拮抗剤のL-366509は濃度依存性に正常および早産陣痛発来を遅延させた。以上の結果より、正常および早産陣痛発来において、オキシトシンの重要な役割が生化学的にも薬理学的にも確認できた。さらに、オキシトシン拮抗剤は正常および早産陣痛発来を遅延させ、この事実は同薬剤の切迫早産治療薬としての可能性を示すものであり、将来臨床応用が期待出来る。
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[Publications] Lin S. -H. et al. (Kawarabayashi T): "Metabolic mapping of the brain in pregnant, parturient and lactating rats using Fos immunohistochemistry" Brain Research. 787. 226-236 (1998)
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[Publications] 瓦林 達比古: "オキシトシン産生調節機構とその生理作用" 日産雑誌. 50(8). 599-604 (1998)
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[Publications] Kobayashi M. et al. (Kawarabayashi T): "Role of oxytocin in the initiation of term and preterm labor:changes in receptor density and plasma oxytocin concentiation and the effect of an oxytocin antagonist, L-366 ,509 in rats." Am.J.Obstet.Gynecol.(in press). (1999)