1999 Fiscal Year Annual Research Report
CGH法によるヒト子宮体部癌の多段階発癌機構解析に基づく診断治療法の開発
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09671726
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Research Institution | JAPANESE FOUNDATION OF CANCER RESEARCH |
Principal Investigator |
平井 康夫 財団法人 癌研究会, 癌研究所・細胞生物部, 研究員 (00260076)
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Keywords | 子宮体癌 / TGFβRII / BAX / β-catenin / PTEN / 遺伝的不安定性 / CGH(comparative genomic hybridisation) / 発癌過程 |
Research Abstract |
子宮体部腫瘍性病変を臨床病理学的に再分類し、各発癌段階に特徴的な分子生物学的変異を同定することにより、子宮体部癌の発癌過程を解明することを目的とした。隣接する臨床部門と協力して、informed consentの得られた子宮体部腫瘍患者の手術材料より、腫瘍部及び正常部分の鮮明組織材料を採取した。組織材料は一旦凍結保存した後、DNA抽出及び病理組織学的検索に供した。詳細な臨床病理学的検討により以下の結果を得た。 1.DNAの修復機構の喪失と関連するreplication errorにもとづく遺伝的不安定性の有無を全例で解析した。遺伝的不安定性は、解析した子宮体癌症例の30%弱と高率にみられた。 2.遺伝的不安定性に基づく発癌過程において、そのターゲットになっていることが予測される、TGF βRII、BAX、E2F、PTENの各遺伝子について変異分析をした。遺伝的不安定性が認められる症例では、TGF βRII、BAX、PTENの各々に高率な変異が同定された。 3.CGH(comparative genomic hybridisation)法により、全染色体上の遺伝子コピー数の増減の有無を検索した。TGF βRII、BAX、PTENに変異の同定された症例では、それぞれの対応する染色体上の座位にコピー数の減少がみられる傾向があった。遺伝的不安定性をみとめる子宮内膜癌にみられたPTEN遺伝子変異の場合特に、対側アレルの欠失を高率にみとめることをCGH法により初めて推定した。PTEN遺伝子の変異は、子宮内膜癌の発癌過程に深く関わっている。 また、CGH解析の結果、1q、9qに特に高率にcopy数の減少が見られ、2q、12qには特に高率なcopy数の増加が認められた。 4.子宮内膜癌において、PTEN遺伝子の変異の予後因子との関係をみると、PTEN遺伝子変異を認める症例では、G1 体癌、progesteron陽性症例が有意に多く、予後良好な因子との相関がみられた。 5.子宮内膜癌において、β-cateninの細胞内異常蓄積が高率にみられた。β-cateninの異常蓄積は、遺伝的安定性をみとめる場合には特に高率だが、PTEN遺伝子変異の有無及び予後因子とは相関しなかった。
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Research Products
(21 results)
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[Publications] H.Yoshikawa,Y.Hirai et al.: "Human papillomavirus infection and other risk factors for cervical intraepithelial neoplasia in Japan"British Journal of Cancer. 80. 621-624 (1999)
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[Publications] K.Yanoh,Y.Hirai et al.: "Morphologic analysis of positive peritoneal cytology in endometrial carcinoma"Acta Cytologica. 43. 814-819 (1999)
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[Publications] K.Utsugi,Y.Hirai et al.: "Utility of the monoclonal antibody HIK1083 in the diagnosis of adenoma malignum of the uterine cervix"Gynecologic Oncology. 75. 345-348 (1999)
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[Publications] N.Takeshima,Y.Hirai et al.: "Assesment of the revised International Federation of Gynecology and Obstetrics staging for early invasive squamaous cervical cancer. Gynecologic Oncology"Gynecologic Oncology. 74. 165-169 (1999)
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[Publications] T.Tabata,Y.Hirai et al.: "Low-Grade Endometrial Stromal Sarcoma with carciovascular involvement-A report of three cases-"Gynecologic Oncology. 75. 495-498 (1999)
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[Publications] C.Nagata,Y.Hirai et al.: "Serum carotenoids and vitamins and risk of cervical dysplasia from a case-control study in Japan"British Journal of Cancer. 81. 1234-1237 (1999)
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[Publications] 平井康夫: "子宮癌の病態、診断・治療"クリニカルスタディ. 20. 12-20 (1999)
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[Publications] 平井康夫 (武谷雄二編): "子宮頸部の細胞診-腺上皮病変"新女性 医学大系40婦人科腫瘍の細胞診. 20. 192-202 (1999)
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[Publications] 南敦子、平井康夫 他: "子宮頸部初期腺系病変-上皮内腺癌細胞像を中心に"日本臨床細胞学会関東連合会誌. 24-25 (1999)
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[Publications] 田畑務、平井康夫 他: "子宮体部粘液性腺癌の一例"日産婦東京会誌. 48. 86-89 (1999)
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[Publications] 田畑務、平井康夫 他: "骨盤内放射線照射後の子宮体部Clear Cell Adenocarcinomaの一例"日本婦人科腫瘍学会誌. 17. 40 (1999)
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[Publications] 田畑務、平井康夫 他: "子宮頸部Glassy Cell Carcinomaの2例"日本臨床細胞学会雑誌. 38. 363-366 (1999)
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[Publications] 竹島信宏、平井康夫 他: "大血管系に湿潤を認めたlow-grade endometrial stromal sarcomaの3例"日本婦人科腫瘍学会誌. 17. 44 (1999)
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[Publications] 竹島信宏、平井康夫 他: "子宮頸癌Ia期(新規約)の臨床的取扱いについて-新FIGOIa期子宮頸部扁平上皮癌の取扱いについて-"弟37回子宮癌研究会記録. 38-43 (1999)
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[Publications] 西田秀隆、平井康夫 他: "免疫特殊染色により診断し得た子宮平滑筋肉腫の一例"日産婦東京会誌. 48. 553-556 (1999)
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[Publications] 西田秀隆、平井康夫 他: "子宮頸癌放射線治療35年後に発生した子宮体部明細胞腺癌の一例"日本婦人科腫瘍学会雑誌. 17. 165-169 (1999)
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[Publications] 杉山裕子、平井康夫 他: "腫瘍径1cm以下の小さな子宮体癌の細胞診-子宮体癌の早期発見のために-"日本臨床細胞学会雑誌. 38. 379-384 (1999)
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[Publications] 楯真一、平井康夫 他: "子宮内膜間質肉腫捺印細胞診に血管所見が特徴的であった3例の検討"日本臨床細胞学会誌. 38. 587-590 (1999)
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[Publications] 岡野滋行、平井康夫 他: "子宮肉腫の術前細胞診断に関する検討"日本診療細胞学会誌. 38. 525-527 (1999)
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[Publications] 坂本優、平井康夫 他: "CGH法によるゲノム異常の解析-婦人科がん診断への応用"Cytometry Research. 9. 41-51 (1999)
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[Publications] 荒井祐司、平井康夫 他: "子宮頸部腺癌-Adenoma malignumの細胞像について-"日本臨床細胞学会雑誌. 38. 1-5 (1999)