音響刺激に対する前庭系ニューロンの反応に関する免疫組織化学的研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09671734
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 室伏 利久 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30242176)
• Keywords: 前庭 / 耳石器 / クリック / 前庭頚反射 / 球形のう

Research Abstract

動物実験に関しては、昨年度までに引き続いて行った。これまでと染色の条件を若干変更したことにより染色性の向上を認めた。音刺激負荷後のc-fosの発現に関しては、蝸牛神経核をはじめとする聴覚伝導路に明らかな発現が認められた。同時に刺激と同側の前庭神経核においても発現が認められた。前庭神経核のなかでも外側前庭神経核を中心とする領域に発現が認められた。これは、球形のう由来の前庭神経の投射部位と一致し、また、電気生理学的に確認されている音響刺激に反応する前庭神経核ニューロンの分布にも矛盾しない。電気生理学による知見が免疫組織化学的にも裏付けられるものと期待される。来年度は、この実験結果の再現性を確認したい。最終的には来年度の米国の神経科学会において発表を計画している。
このほか、前庭性頚筋電位の動物モデルの開発が進められた。モルモットの頚部からヒトの前庭性頚筋電位と特徴を共有する反応が記録された。すなわち、前庭機能が保存されている動物においては、聴力が消失していても本反応が認められた。この反応についても来年度さらに研究をすすめる予定である。この研究については、来年度のバラニー協会の研究発表会で報告を予定している。
ヒトに関する研究では、音響刺激のほかに電気刺激を用いて、障害部位を鑑別する試みが進められた。具体的には、3mA、1msecの電気刺激による頚筋反応の平均加算にて、音響刺激と類似の反応が認められた。また、前庭神経炎などの前庭機能異常症例において電気刺激頚筋反応も消失することから、本反応も前庭由来の反応と考えられた。また、種々の疾患の検討から、音響刺激のみならず、電気刺激にても反応が生じないことは後迷路性障害を示唆するのではないかと考えられた。

Research Products

• [Publications] Murofushi T, Matsuzaki M, Wu CH: "Short tone burst-evoked myogenic potentials on the sternocleidomastord muscle"Arch Otolargngol Head Neck Surg. Vol.125. 660-664 (1999)
• [Publications] Matsuzaki M, Murofushi T, Mizuno M: "Vestibular evoked myogenic potentials in acoustic tumor patients with normal ABR"Ear Arch Otorhinolaryngol. Vol.256. 1-4 (1999)
• [Publications] Ozeki H, Matsuzaki M, Murofushi T: "Vestibular evoked myogenic potentials in three patients with bilateral profound hearing loss"ORL. Vol.61. 80-83 (1999)
• [Publications] Wu CH, Murofushi T: "The effect of click repetition rate on VEMP"Acta Otolaryngol (Stockh). Vol.119. 29-32 (1999)
• [Publications] Wu CH, Young YH, Murofushi T: "Tone-burst-evoled myogenic potentials in human neck flexor and extensor"Acta Otolaryngol (Stockh). Vol.119. 741-744 (1999)
• [Publications] 室伏利久、清水賢、竹腰英樹、松崎真樹: "Galvanic body swoy test 異常症例における前庭性頚筋電位"Equilibrium Res. Vol.58. 645-649 (1999)