1998 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移におけるカドヘリンの役割と診断および治療への応用に関する研究
Project/Area Number |
09671756
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
與田 順一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (10230822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 匡人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80205658)
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Keywords | 癌転移 / カドヘリン / 血管新生 / 接着分子 |
Research Abstract |
癌細胞間の接着を抗E-cadherin抗体で阻害した場合の血管新生誘導因子について検索した。 1. HUVEC(human umbilical vein endothelial cell)に対する増殖作用について、3種の頭頚部扁平上皮癌について検討した。E-cadherinを発現しているOKK-mとHSC-3の培養上清の添加によって、HUVECの増殖がMTTassayで示された。E-cadherin陽性細胞ではE-cadherinによる細胞間接着の阻害によって、培養上清中に血管内細胞に対する増殖作用をサイトカインの存在が示唆された。 2. 培養上清中の血管新生誘導因子を同定するため、ELISA法によってIL-1α、TNF-α、IL-6、IL-8、bFGF、VEGFの産生を検討した。その結果、VEGFの産生増加が認められた。VEGF mRNAの発現をNorthern blotで検討した結果、発現の増加が観察された。この発現増強は細胞内チロシンリン酸化阻害剤であるHerbimycinAによって抑制された。 以上のことから、癌細胞間の細胞解離によるシグナルは細胞内のチロシンリン酸化によって細胞の核に伝わり、VEGFの発現を誘導し、VEGFの産生が高まり血管内皮細胞を増殖させたと考えられた。癌細胞間の接着解離は転移の始まりであるが、同時に血管新生が始まることは癌の転移にとって非常に好都合な状況と作り出すと推察される。E-cadherinは細胞間の接着のみならず、血管新生の誘導にも関与する重要な分子であることが示された。
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