1999 Fiscal Year Annual Research Report
頭頚部扁平上皮癌の遺伝子治療に向けての基礎的検討:特に標的遺伝子について
Project/Area Number |
09671772
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
熊澤 博文 関西医科大学, 医学部, 助教授 (80148519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
京本 良一 関西医科大学, 医学部, 助手 (10319618)
立川 拓也 関西医科大学, 医学部, 助手 (30216981)
福本 学 東北大学, 医学部, 教授 (60156809)
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Keywords | 頭頚部腫瘍 / 遺伝子治療 / サイクリンD1 |
Research Abstract |
頭頚部扁平上皮癌パラフィン包埋切片45例を用いて、Differential PCR法にて、サイクリン1遺伝子増幅の検出を行った。45例のうち、10例(22%)に遺伝子増幅を認め、dysplasia部12例のうち、3例(25%)でも、サイクリンD1遺伝子増幅を認めた。これより、dysplasia部の段階ですでに、サイクリンD1遺伝子増幅が生じていることが示唆された。著者らのサイクリンD1に対するモノクロナール抗体(DCS6)を用いた検討では、45例中24例(53%)で、蛋白過剰発現を認めたが、染色性の強度に多様性を認めた。また、蛋白過剰発現細胞の分布においても、一切片上における腫瘍部分内で不均一性を認めた。さらに、腫瘍部に隣接したdysplasiaにおける蛋白発現を検討すると、12例中8例(67%)にサイクリンD1蛋白過剰発現がすでに生じていることが確認されたが、正常部でほぼ全例に過剰発現を検出しなかった。サイクリンD1遺伝子増幅および蛋白過剰発現と臨床病理学的因子との相関関係において、蛋白過剰発現は、いずれの因子においても有意な相関関係を認めなかったが、遺伝子増幅は、中咽頭および下咽頭原発、リンパ節転移、低分化度と有意な相関関係を認めた。また、カプランマイヤー法を用いて遺伝子増幅例および蛋白過剰発現例における5年生存率の検討した。サイクリンD1遺伝子増幅を認めた10例と残りのサイクリンD1遺伝子増幅を認めなかった35例との5年生存率を比較すると、有意にサイクリンD1遺伝子増幅を認めた症例群で予後が悪く、サイクリンD1遺伝子増幅が予後因子として有用であることを示唆している。さらに、蛋白発現についての検討において、45例中蛋白過剰発現を認めた24例と蛋白過剰発現を認めなかった21例の5年生存率を比較すると蛋白過剰発現を認めた群の方で予後が悪く、蛋白レベルでも予後因子として有用であることを示唆している。さらに、coxの比例ハザード分析を用いて多変量解析を行うと、遺伝子増幅のみが独立した予後因子であり、蛋白過剰発現の有用性は低かった。すなわち、サイクリンD1蛋白発現は、遺伝子増幅以外の因子で修飾される可能性を有し、その予後因子としての指標性に関してサイクリンD1遺伝子増幅の検討の方がより高いものと考えられた。
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