1997 Fiscal Year Annual Research Report
網膜神経節細胞に発現する新しい細胞増殖因子の検索とその分子クローニング
Project/Area Number |
09671789
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
菊池 孝信 信州大学, 医学部, 講師 (50177797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片井 直達 信州大学, 医学部・附属病院, 助手 (10260572)
吉村 長久 信州大学, 医学部, 教授 (70211662)
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Keywords | 緑内障 / 網膜神経節細胞 / 細胞増殖因子 / 細胞死 / RT-PCR / cDNAクローニング |
Research Abstract |
緑内障やある種の循環障害による網膜症は網膜神経節細胞の細胞死が引き金となって網膜全体が損傷される疾患である。本研究ではこれらの疾患の新しい治療法を開発する目的で、神経細胞死を阻害する細胞増殖因子の検索および網膜細胞で発現している新しい細胞増殖因子の単離を試みた。また、増殖因子の網膜神経節細胞に対する生理作用を分子レベルで解析するために網膜神経節細胞の組織培養系を確立するための検討を行った。 網膜細胞で発現している細胞増殖因子をRT-PCR法を用いて検索するためのプライマーデザインを行った。神経系細胞の細胞死に対して阻害効果を有するBDNF等のneurotrophic factorの塩基配列を比較して3系統に分類し、それぞれの系統について高い相同性を示す領域の配列をもとにプライマーを合成した。成人ラットおよび生後8日目の幼若ラットの網膜より抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行った。アガロース電気泳動によって予想される大きさのPCR産物を分離・精製し、AT-クローニング・ベクターを用いてサブクローニングした。各プライマーセットについて50個のクローンを単離しその塩基配列を決定したが、未知の遺伝子のクローンを見いだすことはできなかった。現在、nested primer法およびTouchdown PCR法の条件を検討中である。最近、レンズ上皮細胞で新しい細胞増殖因子(LEDGF)が見出された。この増殖因子はHepatoma-derived growth factorとアミノ末端部分が67%の高い相同性を示し、細胞の創傷治癒に関与していることが推測されている。HDGFとの相同領域の塩基配列をもとにプライマーを作製してRT-PCRを行ったところ、LEDGFと同じ塩基配列をもつPCR産物が見出された。現在、この遺伝子の完全長cDNAのクローニングを行っている。網膜神経節細胞の培養系の検討は神経節細胞の表面抗原であるThy-1に対する抗体を用いて神経節細胞を選択的に分離・回収する二段階パンニング法を行った。回収された神経節細胞を種々の細胞接着因子および培養液で培養条件の検討を行い、安定に培養する条件を決定した。今後はこの培養細胞を用いてグルタメイトなどの神経細胞に対して細胞毒性を示す物質による細胞死の検討を行う予定である。
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