2000 Fiscal Year Annual Research Report
歯胚上皮の分化過程における細胞質シアリダーゼの役割
Project/Area Number |
09671845
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋田 博敏 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10108540)
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Keywords | シアロ複合糖質 / 細胞質シアリダーゼ / 歯胚上皮 / 遺伝子組織化学 / 免疫組織化学 / レクチン組織化学 / ラット / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
(研究目的)歯胚上皮において、細胞質シアリダーゼの酵素量および細胞質中のシアロ複合糖質の量が分化に伴って変化するか否かを組織(または細胞)化学的手法を用いて検討する。また、外因性のシアリダーゼの働き(組織切片の酵素処理)により、細胞質中のシアロ複合糖質からシアル酸残基が遊離するか否かを、レクチン細胞化学的な染色性の変化を指標として透過型電子顕微鏡で検討する。 (研究結果)胎生18日ラット臼歯歯胚を化学固定後、一部を凍結切片用試料とし、他はLRWhite resin包埋用試料とした。細胞質シアリダーゼの発現量は、mRNAレベルでは歯胚上皮の分化に伴って大きく変化した(遺伝子組織化学的な染色性を指標にした)。しかし、蛋白質レベルでの変化は微少であった(免疫細胞化学的な染色性を指標にした)。一方、細胞質中のシアロ複合糖質の量については、レクチン細胞化学的な染色性が低いため、分化に伴う変化が明確でなかった。組織切片の酵素処理には、リコンビナントの細胞質シアリダーゼと市販の各種シアリダーゼを使用した。前者は、ラット細胞質シアリダーゼのcDNAを導入した大腸菌を増殖させ得られた。前者による酵素処理では、酵素液中に混入する他の成分によって切片が汚れて観察に耐えない結果に終わった。今後、酵素液の調整に改善を必要とする。後者では、酵素処理の至適条件をこの期間中に見出せなかった。 (考察、結論)細胞質シアリダーゼの発現量は歯胚上皮の分化に伴って変化するが、その変化はmRNAレベルで顕著であるのに対し蛋白質レベルでは顕著でない。その理由として、酵素量の動的な平衡状態が考えられる。シアロ複合糖質の量的な変化と酵素処理の至適条件については、さらに時間をかけて検討する必要がある。
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