1998 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄体液調整機構に関する形態学的研究-歯髄内神経線維分布における免疫電子顕微鏡的アプローチ-
Project/Area Number |
09671859
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田畑 正志 九州大学, 農学部, 助教授 (40145503)
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Keywords | 歯髄 / 血管 / 神経線維 / 免疫電顕 / 走査電顕 / 神経伝達物質 |
Research Abstract |
歯髄の血管は豊富な自律神経線維により神経支配を受け、血流調整が行われ、結果として歯髄中の体液調整が行われていると想像される。従来毛細血管および毛細血管後細静脈への神経分布についてはほとんど知られていなかったが、今回の研究成果により、歯髄内の血管は動脈ばかりでなく、毛細血管さらには静脈も自律神経線維の直接の支配を受けていることが明らかとなった。この際、交感神経からの神経伝達物質が放出されると以下のカスケードが働くものと想像される。すなわち、神経伝達物質は平滑筋細胞に直接働き、電位依存性のカルシウムチャンネルを開口するかもしくは、Gタンパクを介したシグナル伝達機構によりフォスフォリパーゼCの活性化にともなうIP_3の細胞内への拡散および滑面小胞体からのカルシウムイオンの放出かのいずれかの機構による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が引き起こされ、結果として平滑筋細胞が収縮するという一連の反応である。平滑筋が収縮すると、血管腔は狭小化し、血流量の減少が引き起こされる。平滑筋細胞の先端には指状の無数の突起が血管内皮細胞外側壁に錨を降ろすように接着しているという今回の走査型電子顕微鏡観察結果から、平滑筋が収縮すると、あたかもゴム管をひもで縛るような仕組みで血管腔の狭小化が起こることが示唆された。一方、副交惑神経系の神経伝達物質として考えられるP物質の神経線維中の存在が今回の研究成果として免疫電子顕微鏡研究により明らかにされた。このことから、以下のカスケードにより血管腔の拡大が起こり、血流量の増大が起こるものと想像された。すなわち、副交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質は、そのレセプターを有する血管内皮細胞に働き、カルシウムイオンの上昇を引き起こす。内皮細胞内で上昇したカルシウムイオンはカルシウム結合タンパクであるカルモデュリンに結びつき、このカルシウム-カルモデュリン複合体は内皮細胞中の一酸化窒素合成酵素の活性化に働き、合成された一酸化窒素は内皮細胞から周囲の血管平滑筋に拡散する。一酸化窒素は、血管収縮の際に平滑筋細胞内に広がったカルシウムイオンの波に対して抑制性に働き、結果として平滑筋の弛緩、それにともなう、血管腔の拡大が起こるのであろう。
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[Publications] 田畑正志 他3名: "Blood ressels and nerve fivers in rat lncisor pulp: immunoelectron microscopic observation with anti-sabstance P antibody." European Journal of Oral Sciences. 106・1. 388-391 (1998)
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[Publications] 田畑正志 他2名: "Fluid flow in the dental pulp hypothesized by morphological study." Dentistry in Japan. 34・1. 3-7 (1998)
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[Publications] 田畑正志 他4名: "Innerrotion of blood vessils in the rat incisor pulp : a scanning electron microscopic and immunoelectron microscopic study." The Anatomical Record. 251・3. 384-391 (1998)