1998 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼運動のリズム発生機序-成熟動物のin vitro脳標本を用いた中枢神経機構の解析
Project/Area Number |
09671887
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
片倉 伸郎 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (20185804)
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Keywords | マウス / 摘出標本 / リズム活動 / 咀嚼 / 吸啜 / 錐体路 / 興奮性アミノ酸 |
Research Abstract |
前年度開発した成熟マウスのin vitro脳標本の実験から、同標本の錐体路連続電気刺激によって顎二腹筋に誘発されるリズム活動では、(1)その誘発に興奮性アミノ酸、特にnon-NMDA型受容体が重要な役割を演じており、(2)NMDA型受容体はリズム形成に必須ではないがそのリズム活動の修飾に一定の役割を演じていることが明らかにされた。これはラット新生仔の摘出脳幹標本で観察されているNMDA型受容体の活性により誘発される吸啜運動とは明らかに対照をなしている。そこで本年は(1)生後何日までNMDA投与によって吸啜様リズム活動の誘発が可能なのか、(2)生後何日で錐体路刺激によって咀嚼様リズム活動が誘発可能となるのかを、それぞれマウスの摘出脳幹標本ならびにin vivo標本を用いて検討した。実験にはC57BL系マウスを用いた。その結果、マウスの摘出脳幹-脊髄標本でもラットと同様に、潅流液中へのNMDA投与によって舌下神経ならびに舌にリズミカルな吸啜様活動が誘発されることが確認されたが、さらに吸啜様リズム活動は生後10日齢前後まで、誘発されることが判明した。一方、in vivo標本では、大脳皮質刺激によって誘発されるリズミカルな咀嚼様顎運動は歯牙の萌出する生後12日前後以降で初めて可能となることがわかった。マウス摘出脳幹-脊髄標本では潅流液中へのNMDA投与によって舌下神経だけでなく、三叉神経や顔面神経にもリズミカルな神経活動が誘発されるが、脳幹の前頭切断によってそれぞれの神経の運動ニューロンを別個に含む標本を作製し潅流液中へNMDAを投与すると三叉・顔面・舌下神経にそれぞれ独立したリズム活動が誘発されることが観察された。以上の結果は、マウスでは吸啜から咀嚼への転換に伴って生後2週齢前後の時期までに脳幹内で様々な可塑的変化が起こっている可能性を示唆している。
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[Publications] Katakura, N. et al.: "Relationship between inspiratory and NMDA-induced sucking-like activities in isoluted brainstem from rats" Journal of Dental Research. 77. 751- (1998)
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[Publications] Nakajima, M. et al.: "Separate oscillators for NMDA-induced VII and XII activities in isorated rat brainstem" Journal of Dental Research. 77. 1005- (1998)
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[Publications] Katakura, N. et al.: "Separate oscillators for NMDA-induced rhythmic V, VII and XII nerve activity along the neural axis in an in vitro brainstem preparation from newborn mice" Japanese Jouarnal of Physiology. 48 (Suppl. ). S153- (1998)
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[Publications] 中島美鈴: "三叉・顔面・舌下神経運動ニューロンの吸啜リズム発生器の脳幹における分節状配列" 口腔病学会誌. 66. 予定 (1999)
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[Publications] 古田さおり: "成熟マウスin vitro脳幹標本における顎二腹筋リズム活動の誘発" 口腔病学会誌. 65. 74-83 (1998)
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[Publications] 片倉伸郎: "吸啜運動から咀嚼運動への転換" 歯科基礎医学会誌. 40. 338- (1998)