1998 Fiscal Year Annual Research Report
歯肉増髄症のメカニズムの解明-特に薬効が細胞内シグナル伝達に与える影響について-
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09671968
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Research Institution | NIHON UNIVERSITY |
Principal Investigator |
村井 正大 日本大学, 歯学部, 教授 (50059185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 直之 日本大学, 歯学部, 助手 (30246904)
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Keywords | 歯肉増殖症 / サイクロスポリンA / コラゲナーゼ / AP-1 / JNK |
Research Abstract |
歯肉増殖症は,主にサイクロスポリン服用患者の副作用として良く知られている。本研究ではサイクロスポリンがLPSにより誘導される歯肉線維芽細胞のコラゲナーゼ遺伝子発現のシグナル伝達経路について検討を加えた。 はじめに,歯肉線維芽細胞中にLPS刺激にて誘導されるコラゲナーゼの発現にサイクロスポリンAが及ぼす影響について検索した。歯肉線維芽細胞を1μg/mlおよび0.1μg/mlのサイクロスポリンAの前処理した後,LPS刺激を行うと,LPS刺激によるコラゲナーゼmRNA発現の増加が抑制された。 コラゲナーゼmRNAの転写には転写因子の一つであるAP-1が重要な役割を果たしていることから,転写因子AP-1の発現に及ぼす影響について検討した。LPS刺激はAP-1結合体の発現をコントロールである未刺激の細胞に比べて2.9倍に増大させた。1μg/mlおよび0.1μg/mlのサイクロスポリンAの前処理はAP-1結合体の発現をそれぞれ1.5倍1.9倍までに抑制した。 JNKは転写因子AP-1の発現に重要な役割を果たしていることから,次の実験では,サイクロスポリンAにて前処理,LPSにて刺激20分後に細胞を回収し,それぞれの,細胞溶解液をキナーゼアッセイにてJNK活性を測定した。LPS刺激により細胞のJNK活性は上昇した。サイクロスポリンAにて前処理した後LPSにて刺激するとJNK活性は未刺激細胞であるコントロールのレベルまで抑制された。以上のように,本研究で我々は,線維芽細胞においてサイクロスポリンAがLPS刺激により誘導されるコラゲナーゼmRNAの発現をJNKおよびAP-1経路を阻害することにより抑制することを明らかにした。この抑制効果がサイクロスポリンAの副作用の一つである歯肉増殖症の病因の一つであると考えられる。
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Research Products
(1 results)