Research Abstract |
1. 目的 顎堤粘膜が極端に薄く,被圧変位性が小さい症例や,顎欠損を伴い口腔内にオブチュレーターを装着する症例では,しばしば軟質裏装材を使用する.しかしながら,軟質裏装材は真菌類,特にCandida albicansの増殖を助長する傾向があり,これに対し抗菌材を含有したアクリル系軟質裏装材を用い,機械的物性および抗菌性試験を行った結果,良好な結果が得られた.そこでアクリル系軟質裏装材よりも物性の安定したシリコーン系軟質裏装材に抗菌材を添加し,抗菌材含有率を変化させ,シリコーン系軟質裏装材の機械的性質と抗菌性に及ぼす影響について比較検討を行った. 2. 結果 水中浸漬後のショアー硬さ試験の結果,軟質裏装材は増加傾向を示し,二,三週間後では大きな変化は認められなかった.また,大気中放置後のショアー硬さ試験の経時的変化も水中浸漬後の結果と同様となった.平均値の差の検定を行った結果,有意な差は認められなかった.吸水試験の結果,抗菌材添加,無添加に関わらず軟質裏装材に大きな経時的変化は見られなかった.抗菌性試験の結果より,抗菌性軟質裏装材において生残菌数は減少し,抗菌材無添加の軟質裏装材と比較し,有意な差が認められた. 実験結果より,抗菌材含有率が高くなるに従い,硬度に増加傾向が認められ,吸水率においてもわずかな増加傾向を示した.問題となる抗菌性試験においては,抗菌材無添加の軟質裏装材の生残菌数が高い値を示したのに対し,抗菌材含有軟質裏装材は有効な抗菌性が得られた. しかしながら,抗菌材含有率が高くなるに従い,硬化時間が遅延する傾向が認められた.この理由として,抗菌材が触媒に影響を及ぼしたと考えられ,今後,抗菌材の組成を確認し,それに対し,シリコーン系軟質裏装材の組成を組み替えなければならないと思われる.
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