Research Abstract |
本研究の目的は最近使用されるハロゲン化吸入麻酔薬が三叉神経-循環動態の関係に及ぼす影響を調べることであった.初年度では,まず,動物実験に最も多く使用される麻酔条件下で三叉神経電気刺激のみによる循環動態の変動を検討した.測定項目は,観血的動脈圧,心拍数,大動脈血流量,大脳皮質血流量とした.電気刺激には白金双極電極を用い,オトガイ神経を,持続時間0.5mSの矩形波にて,頻度1,5,10,50Hz,強度0.5,5,20mA,の12の条件で,それぞれ10秒間刺激した.実験は,ウレタン,α-クロラロースを腹腔内投与後,気管切開を行い,アルクロニウムにて不動化し,人工呼吸下で行った.上行大動脈血量は,電磁血流計(MFV-3200,日本光電)にて,大脳皮質血流量は,レーザードップラー血流計(ALF-2100,アドバンス)にて測定した. 血圧の低下は,5および10Hzの刺激において著名で,強度5および20mAの刺激で平均約40%の血圧低下を認めた.心拍数においてもすべての刺激様式において減少を認めたが,その程度は平均約5〜6%の減少にとどまった.上行大動脈血流量の減少も認められたが,その程度は平均約6〜7%にとどまった.これらのことから,オトガイ神経刺激によって惹起される血圧低下は,交感神経活動の減少によっておこった末梢血管抵抗の低下が主原因であり,心拍出量の低下の関与は少ないことが示唆された.なお,大脳皮質血流量は,平均動脈圧の変動とほぼ同様の変化を示し,平均で約40%の減少を認めた.ついで,セボフルランとイソフルランがこれらの変化に与える影響を検討した.1MACの投与では,オトガイ神経電気刺激による循環動態の変動は抑制されなかった. 来年度は,吸入麻酔薬によって三叉神経電気刺激による循環動態が抑制される条件を検討するとともに,自律神経活動の変動もあわせて検討する予定である.
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