1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09672050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉山 勝 広島大学, 歯学部, 助教授 (70187681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻野 哲弘 広島大学, 歯学部, 助手 (00243585)
石川 武憲 広島大学, 歯学部, 教授 (10049380)
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Keywords | 唾液腺腫瘍 / インテグリン / 分化 / TGF-β |
Research Abstract |
我々は、唾液腺腫瘍の分化が、細胞-細胞間、細胞-基質間相互作用により、調節されているとの発想に立ち、研究を行っている。この観点から、予備実験で調べた唾液腺腫瘍におけるインテグリンの発現につき、今回詳細に再検討した。 正常顎下腺では、α2,α3,α6,β1,β4インテグリンは、全ての腺房細胞と導管細胞に発現したが、発現様相は異なっていた。すなわち、α2,α3とβ1は、細胞膜上にほぼ均一に染色されたが、α6とβ4は、基底側に強い局在を示した。多形性腺種では、α2とα3で導管部で均一に染色されたのに対し、α6とβ4は基底側に限局していた。β1の染色程度は弱かったが、α2やα3と類似の染色様相を示した。粘液腫様部の細胞では、検索した全てのインテグリンが発現した。高分化型粘表皮癌では、α2とα3が殆どの上皮細胞に発現したのに対し、α6とβ4は上皮-間質境界部に主に発現し、その染色性は弱かった。腺様嚢胞癌の篩状構造部では、α2とα3が殆どの上皮細胞に陽性であったのに対し、α6とβ4は散在性の発現を示した。 以上まとめると、α2,α3とβ1インテグリンは、正常と3種の腫瘍組織で、その発現様相に著明な差は見られなかった。一方、α6とβ4インテグリンは、正常、多形性腺腫、粘表皮癌組織では、基底側に局在したのに対し、腺様嚢胞癌では、散在性に発現した。以上の結果は、α6とβ4インテグリンの発現が、唾液腺腫瘍の分化よりも、腺様嚢胞癌の侵潤性との相関を持つことを示唆している。また、インテグリンの発現や細胞外基質の産生を促進するTGF-βのレセプター、TGF-βRIIは、粘表皮癌で、60.9%、腺様嚢胞癌で90%の発現率であった。しかし、TGF-βや他のレセプターの発現率や発現様相については、現在検討中である。
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