1999 Fiscal Year Annual Research Report
口蓋裂術後症例の構音機能に及ぼす口蓋床(Hotz)装用の効果
Project/Area Number |
09672064
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
鈴木 恵子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40286381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 安晴 北里大学, 医学部, 講師 (00210401)
中北 信昭 北里大学, 医学部, 講師 (40180260)
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Keywords | 口蓋裂 / Hotz床 / 構音 / 超音波 / 舌運動 |
Research Abstract |
Hotz床装着児、非装着児、健常児、各3例について、哺乳中の舌の動態を超音波を用いて観察した結果、第一に、口蓋裂児では健常児に比し、吸啜時の舌後方部から舌根にかけての変移が大きく、殊に乳が乳首から射出される時の舌根部の低下が大きい傾向が認められた。この傾向はHotz床の装着・非装着に関わらず同様に認められた。第二に、Hotz床装着児では非装着児に比し、哺乳時の舌運動の範囲や方向の不規則な変動が軽減し、より安定した運動を示した。第一の結果は、Hotz床を装着しても、吸啜時に本来必要な口腔内陰圧を形成することが難しいことを示唆し、また第二の結果は、Hotz床が口蓋裂を閉鎖したことで、乳首や舌の過剰な動きが抑制されたことを示唆すると考えられた。 Hotz床装着児の術後構音に関しては、資料の得られた15例のうち(両側唇顎口蓋裂6、片側唇顎口蓋裂9)、(1)鼻咽喉閉鎖は良好13例、軽度不全2例で、不全例はなかった。(2)瘻孔が両側裂3例で生じ、内2例は二次的な処置を必要とした。(3)構音障害として、口蓋化構音6例、声門破裂音2例、鼻咽喉構音2例が認められた。他の症例は発達途上の誤りを示し予後はほぼ良好と推定された。口蓋化構音の内3例は硬質レジン製のHotz床症例、1例は瘻孔例であった。硬質レジン製は口蓋への密着性の低さが舌背の過剰な動きを助長し、口蓋化構音の一因となったと推定された。しかし、軟質レジン製Hotz床でも2例で口蓋化構音が認められ、Hotz床が必ずしも口蓋化構音の発現を阻止しないことが示唆された。 超音波による観察で明らかになったように、Hotz床例においても吸啜時の陰圧形成が困難で舌先の動きが弱いことが推定された。これが口蓋化構音の発現に関与する可能性があるが、結論を得るにはさらに症例を増やして検討する必要がある。
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