1998 Fiscal Year Annual Research Report
口腔病変の発症とその増殖に及ぼすエストロゲン関連機構
Project/Area Number |
09672073
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
小園 知 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (40084785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野塚 実 岐阜大学, 医学部, 講師 (90084780)
伊藤 由美 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (00176372)
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Keywords | エストロゲン受容体 / in situ hybridization法 / 顎下腺腫瘍 / DMBA / ラット |
Research Abstract |
唾液腺原発の悪性腫瘍では、エストロゲン依存性の乳癌と同様に腫瘍細胞にエストロゲン受容体(ER)の発現している症例の存在することを先に報告した。そこで、DMBA誘発ラット顎下腺腫瘍モデルを作成し,その担腫瘍動物に対して抗ホルモン剤投与を行い,腫瘍細胞増殖抑制効果が得られるか否かを検索した。実験動物にはFischer系の雌ラット(8週令)を用い、DMBA処置後20週で顎下部に明らかな腫瘤形成が認めたもの(17例)について生検を施行した。その病理組織学的検索では、誘発された腫瘍は全て高分化型扁平上皮癌であった。この生検材料を用いてERの発現を免疫組織化学的に検索した結果、陽性例(陽性細胞比率から10%cut off levelによる評価)が8例(47%)で、陰性例が9例(53%)であった。陽性例では、ラットのエストロゲン受容体cDNAプローブを使用してのin situ hybridization法より、いずれも細胞質内にERmRNAの発現が認められ、免疫染色所見を裏づける成績が得られた。生検後1週から非ステロイド系の抗エストロゲン剤であるtamoxifenを5mg/kg(ゴマ油に溶解する)連日10日間担腫瘍動物へ投与し、剖検後、病理組織学的検索を行った結果、ER陽性例8例中3例は腫瘍細胞を全く認めず、角化物が紛維性結合組織によって被包された所見を示し、さらに、この角化物に対する異物反応が観察された。他のER陽性例の5例では、癌胞巣の変性を認めたが、生存癌細胞も多く観察された。しかし、増殖活性のマーカーとしてPCNA免疫染色を行った結果、生存癌細胞の確認されたER陽性例の5例は、いずれもPCNA陽性細胞比率では生検材料(平均37.7%)と比べtamoxifen投与後(平均19.0%)では明かな低下が観察された。ER陰性例では、組織学的に癌胞巣の変性像はみられず、また、PCNAの陽性細胞比率も、生検材料では平均41.0%であり、tamoxifen投与後では平均38.3%と、相違は認められなかった。これらの成績は、前年度に確認されたER陽性のヒト唾液腺腫瘍においても内分泌療法が有効である可能性を示唆している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 小園 知: "エナメル上皮腫における性ホルモン・レセプターの発現について" 日本病理学会誌. 86・1. 266 (1997)
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[Publications] T.Yamamoto: "An HRP study of the distribution of primary affernet neurons innervating the buccal stretch receptor in rats" Bull.Tokyo Dent.Coll.38・4. 307-310 (1997)
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[Publications] 小園 知: "ラット歯胚形成期におけるエストロゲン受容体の免疫組織化学的検索" 歯基礎誌. 40. 172 (1998)
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[Publications] 横矢重俊: "肉芽腫性口唇炎5例の臨床病理学的検討" 日口科誌. 47・1. 56-60 (1998)
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[Publications] Y,Kinoshita: "Periodontal ligament cell culture on the hydrophobic substance coated with proteins of periodontal ligament fibroblast-conditioned medium" J.Blomater.Sci.Polymer Edn.9・5. 489-505 (1998)
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[Publications] 井上 聡: "口腔粘膜疹を主症状とした第2期梅毒の1例" 日口粘膜誌. 4・1. 69-73 (1998)