1998 Fiscal Year Annual Research Report
EPA-E投与が実験的歯の移動と移動後の後戻りにおよぼす影響
Project/Area Number |
09672107
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
守本 優子 広島大学, 歯学部・附属病院, 助手 (20223422)
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Keywords | エイコサペンタエン酸 / アラキドン酸 / プロスタグランディン / 破骨細胞 / 骨吸収 / 実験的歯の移動 / 骨形態計測 |
Research Abstract |
エイコサペンタエン酸エチルエステル(EPA-E)はアラキドン酸と骨吸収のケミカルメディエーターであるプロスタグランディンの産生抑制作用を有する。そこで本研究では,EPA-Eの長期経口投与が移動後の歯の後戻りと圧迫側の骨吸収動態におよぼす影響について検討すると同時に,脛骨の組織学的骨形態計測を行い全身的影響を評価した。 4週齢雄性Wistar系ラット40匹を対照群と実験群に分けた。対照群には5%アラビアゴム水溶液,実験群にはEPA-E1000mg/kgを24時間毎に胃ゾンデを用いて経口投与しながら4週間飼育した後,上顎両側第一臼歯を初期荷重20gで頬側移動させた。14日間の移動の後に装撤撤去し,歯の後戻りを観察した。観察期間は3および14日とした。移動開始直前,装置撤去時,実験終了時に採得した精密歯列模型上で歯の移動量と後戻り量を計測した。実験期間終了後,第一臼歯の水平断脱灰薄切切片を作製して光学顕微鏡観察を行った。さらにTRAP染色標本を用いて圧迫側における骨吸収の定量的評価を行った。また同時に,テトラサイクリンとカルセインの投与による骨2重標識を施した上で脛骨近位部の組織学的骨形態計測を行った。 1. 実験群では歯の後戻り量は対照群の82.5%にとどまり,有意に小さくなっていた。後戻り時の圧迫側の組織学的規察によると,実験群では破骨細胞数は対照群の約70%,骨吸収は約80%にそれぞれ有意に減少していた. 2. 脛骨近位部では,対照群に比べて実験群の破骨細胞数は約60〜70%,骨吸収は約80%に抑制されていたが,骨の成長や形態,あるいは骨梁構造に関しては有意な変化は認められなかった。 以上の結果より,EPA-Eの長期経口投与は,圧迫側の破骨細胞の出現と骨吸収を抑制することによって移動後の歯の後戻りを遅延させるが,全身的な骨代謝への影響は小さいことが示唆された。
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