1998 Fiscal Year Annual Research Report
ミュータンスレンサ球菌の乳幼児口腔内への初期付着と定着に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
09672108
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
香西 克之 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (10178212)
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Keywords | ミュータンスレンサ球菌 / 伝播 / DNAフィンガープリント / 初期付着 / う蝕 |
Research Abstract |
齲蝕原因菌であるmutans streptococci(MS)は,一般に歯の萌出後に定着することが成書に述べられているが,その詳細な時期については報告が少ない。今回我々は低年令児を対象として長期にわたりMSの検出を行ない定着時期に関して検討した。また3家族の4年間におけるMSの経年的分布変化を検討した。 対象は広島大学医学部附属病院に附設されている授乳所の園児および卒園児で,0〜4歳までの35名(男児22名,女児13名)について毎月,歯垢あるいは唾液を歯ブラシを使い採取し,buffered glycerol-sa1ine so1utionに懸濁し,60μlをBacitracin添加Mitis Salivalius寒天培地に播種して37°C,48時間嫌気培養を行なってMSに特徴的なコロニーの検出を調べた。MSの同定にはマンニトール発酵試験および不溶性グルカン合成試験を用いた。同時に口腔内の歯牙萌出程度を診査し,MSの定着との関係を調べた。さらにMSの伝播の由来を確かめるために,承諾を得られた両親からもMSを検出し染色体DNA fingerprintを行なって,各小児の保有するMS菌株の由来を検討した。 35名のうち,期間内にMSの初期定着をみたのは20名でその平均年齢は,24.5か月(2歳0か月)であった。初期定着後は,次第に口腔内のMS量は増加した。また上顎乳前歯部に歯間空隙のない被験児は,初期定着年齢が平均1歳7か月と空隙のある被験児の平均2歳3か月に比べ早期にMS定着を認めた。さらに初期定着したMSの由来は,両親以外が多かったが,両親由来の場合は,親のMS量が多い傾向が認められた。さらに,3家族13名のMSの分布を4年前と比較したところ,4年前と同じ分布を示したのは1名,同じ菌株を有していたのは7名,全て異なったのは5名であった。親子ともにMSの分布は経年的に変化するものの,それは家族内での伝播に依存する様式をとることが多いと推測された。
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[Publications] 桑原さつき: "ミュータンスレンサ球菌の家族内分布に関する経年的研究" 小児歯科学雑誌. 35・2. 340 (1997)
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[Publications] Katsuyuki Kozai: "Intrafamilial Distribution of Mutans Streptococci in Japanese Families and Possibility of Father-to-Child Transmission" Microbiology and Immunology. 43・2. (1999)