1998 Fiscal Year Annual Research Report
ミネラル強化溶液を作用させた歯垢中のミネラル分布とそのフッ素保持に関する研究
Project/Area Number |
09672130
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Research Institution | AICHI-GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
加藤 一夫 愛知学院大学, 歯学部, 助教授 (60183266)
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Keywords | 歯垢 / フッ素 / ミネラル / 分布 / Bio film / in vivo / ヒト |
Research Abstract |
予備的検討の結果を参考に、A:尿素500mM,CaCl_2 20mM,Na_2HPO_4 12mM,Na_2PO_3F(MFP)5mMを含むミネラル強化洗口液(Pearceら,1988)、B:Aから尿素を除外した溶液、C:AからMFPを除外した溶液、D:MFP溶液、E:蒸留水(対照)の5種類の洗口液を調整した。informed consentの得られた被験者11名(年齢20〜31歳)に、研究代表者加藤の開発した歯垢採取装置を上顎臼歯頬側歯面に取り付け、3日間の歯垢形成後、いずれかの洗口液で1日3回、4日間連続して洗口を行い、最終洗口24時間後に歯垢を採取し、直ちに凍結乾燥後樹脂包埋し分析まで保存した。洗口液を変えて試料を反復採取した。本年度は、このように前年度中に採取・処理した歯垢試料のフッ素、リン、カルシウム分布を解析するとともに、予防歯科領域で利用可能な歯垢のフッ素保持能を高める手法を検討するため、歯垢のフッ素保持能におよぼす要因の推定を行った。 A〜E各洗口液を作用させた歯垢のフッ素、リン、カルシウムの層別分布を比較すると、フッ素は、B-E(対照)群間の中層部分、A-E群間の表〜中層、およびA-C群間の表層で、また、カルシウムとリンはA-E群間の表層部で有意な差がみられた。歯垢中のフッ素とミネラルの分布の関連性をみると,ミネラルを添加した溶液(A,B)の作用した歯垢では、カルシウムとリンはともにフッ素と高い相関傾向を示し,ミネラル量の増加に伴ってフッ素量も上昇する可能性が考えられた。従って、これらの所見から、フッ素、ミネラル、尿素またはフッ素とミネラルの共存が歯垢内でのフッ素停滞に必要であり、この効果は尿素の存在で強まることから歯垢pHの上昇がそれを促進すると考えられた。しかし、同一個人から反復採取した試料を用いた予備的検討の結果と異なり、歯垢内層での効果は認められなかった。一方、分散分析により歯垢分画中のフッ素、リン、カルシウム濃度に及ぼす因子としての洗口液と被験者を比較すると、共に有意であったが、寄与率は被験者因子の方が大きく、個人差が歯垢のフッ素保持効果に大きく作用すると思われた。
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