1997 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法によるホスファチジルイノシトール類の脂肪酸側鎖の分析
Project/Area Number |
09672138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森崎 尚子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (00092354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 隆一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (80183838)
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / 情報伝達 / 脂肪酸側鎖 / PI3キナーゼ / PI3 5-ホスファターゼ / 質量分析 / 負イオンFABMS / マトリックス |
Research Abstract |
ホスファチジルイノシトール(PI)のリン酸化、加水分解を経て生成するイノシトール3リン酸(IP3)およびジアシルグリセロールは、細胞内情報伝達にかかわるセカンドメッセンジャーとして知られている。PIの3,4,5位がリン酸化されたPI-3,4,5-P_3(PIP3)も重要なセカンドメッセンジャーと考えられているが、細胞内で生成する量が微量なため機能解明には至っていない。動物のPI類はグリセロール部の1位にステアリン酸を主とする飽和脂肪酸が、2位にアラキドン酸を主とする不飽和の脂肪酸が結合している。我々はPIP3の生体内での機能の解明を行うために1位、2位に飽和のステアリン酸側鎖を持つPI、PI3を合成し、酸素反応を行った。しかし天然品と異なりPIはPI3キナーゼの基質にならず、PIP3は加水分解酵素5-ホスファターゼの基質にならなかった。グリセロールの2位の脂肪酸がどのような時にこられの酵素の基質となるかを検討するために、2位に鎖長の異なる脂肪酸を結合させたPIおよびPIP3を合成した。2位の脂肪酸側鎖の鎖長がC_2,C_4,C_8,C_<12>,C_<16>,C_<18>のPIを用いた実験では、C_2-C_<12>がPI3キナーゼの基質となることが判明した。C_2,C_4,C_8およびC_<18>のPIP3を用いた実験では、C_2,C_4が5-フォスファターゼの基質となることがわかった。2位に長鎖の脂肪酸側鎖をもつものは基質となり得ないことから、これらの結果は酵素が基質を認識する上で、2位の脂肪酸構造が重要であることを示すものである。 実験に用いた合成品および合成中間体の構造認識は、主に質量分析(負イオンのFABMS)で行った。さらに、リン酸化されたPI類の分析を行うために、最も適したFABMS条件を、市販の4位リン酸化PI(PI4P)を用いて検討した。この結果、負イオンFABMS用マトリックスとして広く用いられているトリエタノールアミン(TEA)のみを用いた時より、TEAとグルセロールの3:1混合物を用いた方が、擬分子イオン[M-H]^-を感度良く検出できることを見いだした。
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