1998 Fiscal Year Annual Research Report
決勝格子包接能を有する環化付加体の合成,機能及び結晶構造に関する研究
Project/Area Number |
09672148
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原野 一誠 熊本大学, 薬学部, 教授 (30037593)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
衛藤 仁 熊本大学, 薬学部, 助手 (70221116)
松岡 俊和 熊本大学, 薬学部, 助教授 (50150545)
|
Keywords | クラスレート / シプロペンタジエノン / 環化付加体 / 単結晶X線解析 / 核磁気共鳴法 / ホスト / 分子包接 / 示差走査熱量計 |
Research Abstract |
Cyclopentadienone類(1)をジエン基質として種々のオレフィン類(2)と系統的に付加反応させ,得られた環化付加体(3)を用い,新規骨格クラスレートの検索,その構造修飾と溶媒取り込み能との関連,更に取り込みに関与する因子ついて,核磁気共鳴装置(^1H-NMR)、示差走査熱量計(DSC)、熱重量計(TG)、単結晶X線構造解析の観点から系統的な検討を実施した. 得られた知見を以下に示す. (1) 付加体(3)を種々の溶媒で再結晶し,^1H-NMRよりホスト/ゲスト比を決定した.その結果,結晶格子内にゲストを保持するためには,phenanthrene環の様な固定された多環式芳香環により形成される空間が必要であった.また,置換基の変化により取り込み能に相違が見られ,ジエノフィル部分やphenanthrene環部分の自由度が増すと包接が困難になった.さらに溶媒分子の大きさや形状の違いにより,分子取り込みに選択性が認められた. (2) DSCデータより,ホスト分子が包接したゲスト分子を放出する際に見られる吸熱ピークが,その保持力の大きさによって溶媒沸点より大きくずれることが観測された.また,TGによる包接体の重量減少は^1H-NMRの結果を支持した. (3) 単結晶X線解析から,エーテル系、ケトン系溶媒の包接にはphenanthrene環に対し垂直に固定された芳香環平面が,ベンゼン系溶媒の包接にはphenanthrene環の関与が大きいことが示唆された.この包接には新しいタイプの相互作用が関与しており,ゲスト分子の安定化にはホスト分子とのC-H・・・O型水素結合が,空間の構築に必要な芳香環の固定にはedge-to-face相互作用(σ-π相互作用)が重要な役割を果たしていた. また,溶媒放出に必要なエネルギーはホスト-ゲスト間の相互作用だけでなく,結晶格子を形成しているホスト分子同士の作用も重要な因子になっているものと考察した.
|
Research Products
(1 results)