1998 Fiscal Year Annual Research Report
地衣菌の単離培養による新規有用物質の探索と生合成研究
Project/Area Number |
09672179
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical university |
Principal Investigator |
棚橋 孝雄 神戸薬科大学, 薬学部, 助教授 (20171811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 信夫 大阪市立環境科学研究所, 研究主任 (40270764)
竹仲 由希子 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (90289041)
伊藤 篤子 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (10223132)
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Keywords | 地衣菌 / 単離培養 / フェノール性化合物 / 構造決定 / 生合成 |
Research Abstract |
昨年に引き続き, 「トキシンの生合成経路は,天然の共生状態の地衣では共生藻にとって好ましくないため抑えられているが.地衣菌を単離培養すると発現してくる」との仮説のもとに,地衣菌を単離培養し有用な生理活性化合物を探索するとともに,生合成研究を行った.まず各地で採集した地衣から胞子由来の地衣菌をあらたに単離培養し,その成分検索を行った.Pyrenula属の地衣菌培養からは,昨年得たものに加えて新たに2種のxanthone類を単離し,スペクトルの解析によりそれらの構造を決定した.また同時にこの株からsclerotiorinを単離した.本物質はこれまでPenicillium sclerotiorumより単離されているが,地衣菌の培養から単離したのは初めての例である.さらにCaloplaca属の地衣菌培養の2株からは,計5種のanthraquinone類を単離同定し,またLecanora属の地衣菌培養からは,3種のdibenzofuran類の単離,構造決定を行った.単離した代謝物のうち,anthraquinonc類,xanthonc類についてはEscherichia coliおよびStaphylococcus aureusに対する抗菌活性試験を行ったが,いずれも活性を示さなかった.このように地衣菌を単離培養することにより,本来の地衣とは異なる代謝経路が発現することが明らかとなったので,次に生合成実験を行った.地衣菌Graphis属の単離培養を用いて,^<13>C標識酢酸を投与したところ.これまでに構造決定しているgraphislactone類は得られず,新たにgraphislactone Aが酸化的に脱炭酸したと考えられる2種の代謝物を得た.またそれらの標識パターンから,graphislactone類は不完全糸状菌Altemaria tenuisのマイコトキシンalternyiolと類似の経路で生合成されることが明らかとなった.今後,代謝物に関して他の活性試験を行い,代謝物の生理的意義を調べるとともに,生合成経路や代謝の調節機構を調べることにより,地衣の進化の過程や共生に関して重要な知見が得られるものと期待できる.
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