1998 Fiscal Year Annual Research Report
ステロイド性抗炎症薬によるMAPキナーゼ活性化抑制とサイトカイン産生抑制について
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09672211
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平澤 典保 東北大学, 薬学部, 助教授 (80181155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 和雄 東北大学, 薬学部, 教授 (20006357)
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Keywords | 肥満細胞 / ステロイド性抗炎症薬 / MAPキナーゼ / インターロイキン-4 / c-Jun N-terminal kinase / p38 MAP kinase / phosphatidylinositol 3-kinase / Raf-1 |
Research Abstract |
平成9年度には、ステロイド性抗炎症薬dexamethasoneがMAPキナーゼファミリーのひとつであるc-Jun N-terminal kinase (JNK)の活性化を抑制し、転写因子AP-1の活性化を抑制することを明らかにした(J.Immunol.161:4939-4943,1998)。そこで最終年度である本年度は、MAPキナーゼの活性化を抑制することがサイトカイン産生抑制につながるかどうか、さらに、ステロイド性抗炎症薬のMAPキナーゼの活性化抑制作用の分子機序について解析した。 1. MAPキナーゼ活性化阻害によるIL-4産生の抑制 RBL-2H3細胞を抗原で刺激すると、IL-4のmRNAレベルの増加、およびIL-4蛋白質の分泌の亢進が見られる。この抗原刺激によるIL-4産生は、p38 MAPキナーゼ(p38)とJNKの活性化を抑制するphosphatidylinositol 3-kinaseの阻害薬wortmanninおよびLY294002で抑制された。また、p38阻害薬SB203580もIL-4産生を有意に抑制した。これらの結果から、MAP kinaseの活性化を抑制するとIL-4の産生が抑制されることが明らかになった(投稿中)。一方、MAPキナーゼの活性化を抑制するwortmanninおよびSB203580や、AP-1の転写活性を抑制するレチノイドは、IL-4産生を最大でも50%程度抑制するに過ぎなかった(投稿準備中)が、dexamethasoneはIL-4産生をほぼ完全に抑制した。したがって、ステロイド性抗炎症薬のサイトカインの産生抑制機序として、MAPキナーゼの活性化抑制作用およびAP-1の活性抑制作用以外の作用機序も存在すると考えられる。 2. ステロイド性抗炎症薬のMAPキナーゼ活性化抑制作用の分子機序 Dexamethasoneのサイトカイン産生抑制作用およびMAPキナーゼ活性化抑制作用はいずれもグルココルチコイド受容体拮抗薬により打ち消され、グルココルチコイド受容体を介して作用を発現していることが明らかになった。さらにdexamethasoneはMAPキナーゼキナーゼキナーゼRaf-1の活性化を抑制することをすでに明らかにしているので、その分子機序について解析した。Raf-1は抗原刺激により細胞膜へ移行し、そこでリン酸化されて活性化される。そこで、dexamethasoneがRaf-1の細胞膜移行を抑制するかどうか解析した。その結果、dexamethasoneはRaf-1の細胞膜移行を抑制しないことが明らかになり、dexamethasoneはRaf-1のリン酸化を抑制することが示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hirasawa,N.: "Inhibition by Dexamethasone of Antigen-induced c-Jun N-terminal Kinase Activation in Rat Basophilic Leukemia Cells" Journal of Immunology. 161. 4939-4943 (1998)
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[Publications] 平澤典保: "マスト細胞におけるMAP kinaseの制御機構" アレルギー科. 5. 356-362 (1998)
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[Publications] 平澤典保: "各種ステロイド薬の抗炎症・抗アレルギー作用" アレルギー・免疫. 6. 37-43 (1998)