1999 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系における亜鉛の生理的役割の解析と神経変性疾患に対する作用
Project/Area Number |
09672241
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90145714)
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Keywords | 亜鉛 / 脳 / グルタミン酸作動性ニューロン / におい / 扁桃体 / てんかん |
Research Abstract |
本研究は脳内における亜鉛動態の解析に基づき、その作用の解明をめざしたものである。亜鉛はグルタミン酸作動性ニューロンのシナプス小胞に存在し(このニューロンを亜鉛含有ニューロンと呼ぶ)、グルタミン酸による伝達効率を調整する神経調整因子と考えられている。本研究では、亜鉛とにおいの認知ならびにてんかん発作発症との関係を検討した。これまでにグルタミン酸作動性の二次嗅覚ニューロンが亜鉛含有ニューロンであることを報告した。この結果に基づき、そのニューロン終末が存在する扁桃体において、カルシウムインパルスに依存して細胞外液中に放出される亜鉛をキレート化し、その効果を検討した。インビボマイクロダイアリシス法を利用してラットの扁桃体を亜鉛キレーターであるジエチルジチオカルバメートで灌流したところ、嫌悪臭に対する認知が一時的に低下することが明らかになった。したがって、扁桃体において、シナプス小胞の亜鉛がグルタミン酸作動性ニューロンの神経伝達に必要であることが示唆される。一方、てんかん発作の発現と脳内亜鉛代謝変化との関連が指摘されているが、てんかんモデルであるE1マウスに放り上げ刺激を与えて発作を誘発すると、脳内からの亜鉛の放出が促進されることが明らかになった。E1マウスの痙攣発作は十分な亜鉛を含む食餌を与えることによって抑制される一方、低亜鉛食を与えると促進されることから、脳内亜鉛量の低下が発作の発症に関連することが示唆される。すなわち、グルタミン酸作動性ニューロンの異常興奮によるシナプス小胞亜鉛量の低下が発作の発症と関連するものと考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.: "Role of zinc released by stimulation in rat amygdala"Journal of Neuroscience Research. 57. 405-410 (1999)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.: "Release of zinc from the brain of El(epilepsy)mice during seizureinduction"Brain Research. 828. 174-178 (1999)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.,: "Manganese optake into rat brain during development and aging"Journal of Neuroscience Research. 56. 93-98 (1999)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.: "^<109>Cd transport in rat brain"Brain Research Bulletin. 49. 453-457 (1999)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.: "Metallothionein induction in rat brain after intrastriata1 injection of zinc and cadmium Salts"Journal of Health Science. 45. 20-23 (1999)
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[Publications] 武田厚司: "脳栄養としてのミネラル"FOOD Style 21. 3. 23-27 (1999)
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[Publications] Atsushi Takeda et al.: "Metallothionein IV"C.D.Klaassen ed.,Birkhauser. 5 (1999)