1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトおよびラット脳に発現するエステラーゼを介する薬物の透過および代謝の分子機構
Project/Area Number |
09672274
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
細川 正清 千葉大学, 薬学部, 講師 (70181500)
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Keywords | エステラーゼ / カルボキシルエステラーゼ / ヒト脳 / ヒト肝 / cDNA クローニング / KDEL レセプター |
Research Abstract |
本研究においては、ラットおよびヒト脳に発現するエステラーゼの分子構造および薬物の代謝や脳移行性における役割を明らかにする目的で検討を行った。本年度は、まず構造の類似性が推定されているヒト肝エステラーゼHU1のcDNAをプローブに用いて、ヒト脳λ gtl1 cDNAライブラリーよりヒト脳エステラーゼのcDNAクローニングを行なった。得られた陽性クローンについては、pUC118ベクターにサブクローニング、ジデオキシ法を用いて塩基配列を決定した。その結果、1.3Kbpの長さのヒト脳cDNAクローンhBr1.3が得られた。このcDNA hBr1.3は1285bpの翻訳領域と250bpの非翻訳領域を含んでおり、3′末端の非翻訳領域にはポリA付加シグナルであるAATAAAの配列および69個からなるPoly A taleを有していた。また、塩基配列から推定されるアミノ酸配列について検討を行ったところ、hBr1.3は345個のアミノ酸をコードしており、ヒト肝エステラーゼHU1と比較したところ、活性中心を構成しているアミノ酸近傍やシステイン近傍の配列においては、かなり高い相同性が認められた。しかしながら、C-末端のアミノ酸配列に関しては、肝と異なりKDELレセプターには結合しない可能性が示唆された。この結果は、細胞分画の結果と一致しており、脳と肝では細胞内局在性が異なることが、示唆された。また、cDNA hBr1.3について、現在までに報告されているCESと比較したところ、ヒト肝CESとは71.5%の相同性であったが、イヌ肝CESとの相同性が最も高く85.5%であった。また、これらのアミノ酸配列に基づいて分子進化の系統樹を作製したところ、ヒトの肝と脳に発現しているCESは、かなり早い時期に分化していることが示唆され、進化の初期の段階で臓器特異性、細胞内局在性や代謝における役割が異なってきたものと考えられた。
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