1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09672299
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福田 眞人 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (90208968)
|
Keywords | 性病 / 文化史 / 梅毒 / エイズ |
Research Abstract |
本研究においては、性病、とりわけ梅毒とエイズの文化史的研究を目的として、それらの全体史の外観から入った。問題の項目を明確にするために、まず梅毒に限定して、その歴史的・社会史的および文化史的観点の整理につとめ、その問題点の洗い出しに務めた。 実はまだ未解決の問題点が山積していることがその過程で明らかになったのであるが、たとえば梅毒の起源、その感染ルートさえ定説があるわけではない。一応、従来から定説とされてきたアメリカ大陸起源、コロンブスのアメリカ大陸到達時での旧大陸ヨ-ロッパへの伝播説を取りつつ、他の可能性についても完全には排除していない。それは、たとえば小アジア(トルコ)での風土病であるといった可能性である。 文化史的問題として、性病の社会的意味付けがある。忌むべき病気として完全に社会から差別を受け、隔離され、忌避されたのかどうか。そこに現代では考えられない性病に対する肯定的意味付けがあった可能性を否定できない。 さらに日本という地区を限定して語るとき、16世紀に輸入された梅毒が、そのまま19世紀まで特段の対策も取られないまま放置されたのはなぜか、という問題が残る。それが、外国の駐留軍の安全のために検梅が開始されたことも、当時の日本における性病の認識のあり方を示していよう。 19世紀以降、西洋諸国で取られた性病対策は、まず売春婦の検査から始まったが、その検査がもたらした社会的影響の問題も未解決である。そこにあらたに始まった衛生運動と共に、政府官憲による道徳の管理という問題もあろう。しかし、生殖・性に関する問題は個人の秘密に属する部分であり、隠蔽される可能性が高い。それゆえに性病も潜在化することが多く、その罹患者数、死亡者数の実数を把握するのは困難であろう。 こうした諸々の問題を通して、性病の実態とその対策に供する文化的資料を提供するのが最終的な目的であり意義である。
|
Research Products
(1 results)