1997 Fiscal Year Annual Research Report
マウスモデルを用いたミエリン形成不全原因遺伝子の同定と機能解析
Project/Area Number |
09672311
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 訓也 熊本大学, 医学部, 助教授 (40240915)
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Keywords | ノックアウトマウス / ミエリン形成 / RNA結合蛋白質 / 胚発生 |
Research Abstract |
QkIは中枢神経系のミエリン形成不全を主徴とするマウスquaking(qk)変異の責任候補遺伝子として発見され、構造的にはRNA結合に関与するKHドメインを有する新規遺伝子である.われわれはQkIが実際にquaking変異の原因であることを発生工学的手法を用いて明らかにした.すなわち、QkI全長を含むBACクローンを導入することにより、qk変異の表現型がレスキューされること、さらにQkIのヌル変異を持つノックアウトマウスとqk変異マウスを交配して得られた2重ヘテロ接合体はqk変異の神経学的症状である振戦を示すため、ノックアウトアリルはqk変異を遺伝的に相補しないことが明らかとなった.また、この2重ヘテロ接合体(QkIKO/qk^V)は元々のqk^Vホモ接合体に比べ強度の障害を示し、早期の強直性けいれんや成長障害が認められた.この2重ヘテロ接合体、qk^Vホモ個体、ノックアウト・ヘテロ個体、野生型マウスの脳におけるQkl遺伝子の発現を検討したところ、qk^Vホモ個体では約30%、2重ヘテロ接合体では約15%程度にまで発現量が低下していた.脳の組織を見るとQkIの発現量に比例して、髄鞘形成が進行しており、qk^Vホモマウスではわずかであるがミエリン形成が起こっているのに対し、2重ヘテロ接合体では髄鞘は皆無に近く非常に早期にミエリン形成が停止しているように観察された.またQkIレベルの減少によりMBP,PLP等のミエリン構成蛋白の発現が激減していた.一方QkIは胚発生初期から神経系、心臓において発現が見られるが、QkIの発現が完全に欠損したノックアウトホモ個体は胎生9.5-10.5日において、体後半部の形成不全、脊索、神経管、体節、心臓の形態異常を示し、致死となることが確かめられた. 以上のようにQkIは胚発生、ミエリン形成過程において不可欠であり、またその発現量に相関して多様な表現型が生じるという興味深い結果が得られた.
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Abe, K.and Noce, T.: "A DEAD-box family protein gene, Ddx4, encoding a murine homolog of Drosophila vesa, maps to the distal end of mouse Chromosome 13." Mammalian Genome. 8,. 622-623 ((1997))
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[Publications] Kimura, S., Abe, K., Suzuki, M., Yoshioka, K., Ogawa, M., Kaname, T., Miike, T. and Yamamura, K.: "A 900 bp genomic region from the mouse dystrophin promoter directs lacZ reporter expression only to the right heart of transgenic mice." Dev.Growth Diff.39. 257-265 (1997)
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[Publications] Tanaka, H., Abe, K and Kim, C.-H.: "Quaking gene expression in the zebrafish embryo." Mech.Dev.(印刷中). (1998)
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[Publications] Abe, K., Ko, M.S.H. and MacGregor, G.R.: "A Systematic Molecular Genetic Approach to Study Mammalian Germ Line Development." Int.National J.Dev.Biol.(印刷中). (1998)
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[Publications] Kimura, S., Fujishita, S., Ikezawa, M Ogawa, M., Abe, K. and Miike, T.: "Muscle type promoter and its first intron abnormalities in dystrophin gene in patients with Duchenne muscular dystrophy." J.Child Neurol.(印刷中). (1998)
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[Publications] C.Vernet, K.Abe. and K.Artzt: "Genetic mapping of 10 microsatellites in the t complex region of mouse chromosome 17" Mammalian Genome. (印刷中). (1998)
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[Publications] 阿部訓也: "ネオ生物学シリーズ 8.マウス[DNA生物学のゆりかご]「しっぽの短いねずみくんの話」" 勝木元也編共立出版, 29 (1997)
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[Publications] 阿部訓也: "蛋白質核酸酵素 増刊号 「生殖細胞の発生と性分化」「マウス始原生殖細胞における遺伝子発現」" 岡田益吉・長濱嘉孝・中辻憲夫 編 共立出版(印刷中),