1997 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴を用いたブドウ球菌および(病原性)大腸菌の新しい菌株同定の研究
Project/Area Number |
09672363
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
大原 智子 自治医科大学, 医学部, 助手 (10291626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 喜久 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20129026)
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Keywords | 核磁気共鳴 / ヒト病原菌 / 菌株同定 |
Research Abstract |
本年度は計画に従い、プロトン核磁気共鳴(^1H NMR)分光器を用いて一般的なヒト病原菌4菌種-Escherichia coli,Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosa,Klebsiella pneumoniaeの同定を試みた。臨床材料から分離された上記4菌種の各々10菌株を使用し、JNM-GX270(日本電子)を用いてNMRスペクトルの測定を行った。(基準磁場;6.34テスラ、基準周波数;^1H270MHz)4菌種のNMRスペクトルは菌種・菌株によってシグナルの位置や形状は異なるが、0.5〜4.2ppmの範囲において、約8〜9のシグナル群が認められた。E.coliとK.pneumoniaeは0.8〜1.10ppmに高いシグナルを認める菌株が多い。S.aureusは3.27ppm付近に最も高いシグナルがあるものが9菌株(9/10)にみられたが、他の菌種では1,2菌株にすぎなかった。またS.aureusでは小さいシグナルが1.40〜1.50ppmにみられるが、これは他の菌種にはみられない特徴的なものであった。P.aeruginosaに特徴的なスペクトルは3つのシグナルで構成される2.30〜2.40ppmのシグナル群であった。測定は5回繰り返して行ったが、再現性は極めて満足できるものであった。以上のようにNMRスペクトルを用いてその特徴から菌種の同定ができる可能性を本研究で示した。しかし同じ菌種でも多くの菌株が存在し、それら間のNMRスペクトルの差異に関しては全く不明である。このため本年度はさらに院内感染の起因菌として重要なS.aureusの50菌株を用いて、上記と同様の方法でNMRスペクトルの測定あ行った。それぞれの菌株は特有のNMRスペクトルを示し、院内感染の菌株の同定やそのルートの解明に^1H NMRが有用である可能性が示唆された。今後はNMRスペクトルの分析方法を確立するとともに、菌株のNMRスペクトルと遺伝型の比較を行うことでより詳細な検討を行いたい。
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[Publications] 大原智子: "^1H核磁場共鳴(^1H NMR)を用いた4菌種の迅速同定の検討" 臨床検査. 45. 581-584 (1997)
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[Publications] 大原智子: "プロトン核磁気共鳴((^1H NMR)を用いたヒト病原菌の菌種同定" 臨床病理. 41. 1070-1072 (1997)
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[Publications] 大原智子: "Pnlsed-field gel electrophoresisを用いた院内感染原因菌の検索" Lab.Clin.Pract.15(2). 120-125 (1997)