1998 Fiscal Year Annual Research Report
終末期がん患者の受容過程と看護ケアに関する研究-病状進行と心理面の変化の様相
Project/Area Number |
09672381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河 正子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60291316)
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Keywords | 末期がん患者 / 緩和ケア / 苦痛症状 / 心理 |
Research Abstract |
1996年4月から1997年3月に救世軍清瀬病院緩和ケア病棟に入院した患者113名を対象として病歴調査を実施した。まず過去の3事例の病歴から詳細な情報収集、分析を試みた。その結果、病状の進行や新たな症状の出現などの病状経過と、不安や動揺あるいは希望などの心理的経過との関連を把握する必要が示唆された。そこで、1997年6月末までに在院期間14日以上180日以内で死亡退院した67名について特に、看護記録、医師記録、温度表を中心とした詳細な病状経過および心理的経過の情報収集を行った。調査項目は、個人の背景情報(病名、転移、入院期間、入院時主訴、病名認知、本人・家族の希望、家族構成など)のほか、病状経過(意識レベル、疼痛、呼吸困難、嘔気など)、主な治療・看護ケア、心理的経過(会話表現、感情表現)などである。90日を超える長期在院の患者には、家族の状況を含む複雑な療養経過が認められたことから、在院日数14日〜90日の患者60名に限って、1例毎に1日毎の症状の程度と感情表出の程度を数量化し、経日変化の図示を試みた。60名の概要は、男性27名、女性33名、平均年齢65.4歳、平均在院日数38.0日であった。入院後数日ないし1週間前後の時期に、7日程度、身体的な苦痛症状が緩和された「安定期」の傾向がみられた。しかし、この「安定期」に心理面も安定しているとは限らなかった。数量化にあたっては、前向きの肯定的な内容表現を正、消極的・否定的な内容を負として、各表出の程度を3段階で示した。しかし、死に対する意識や治療・ケアへの意思表示などに関して、肯定的とは言えないが、患者の主体性が強く表現される場合があり、異なる座標軸の設定が必要と考えられた。この点も考慮し、今後のClinical AuditにもつながるProspectiveな調査方法試案を作成した。なお、113例について、個別性に留意して重点的に実施された看護ケアの内容を検討した。
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