Research Abstract |
慢性疾患をもつ子どもの自己概念とその家族的・療養関連因子との関係を検討するために,今年度は小児糖尿病の児童とその両親27組を対象に面接法および質問紙法による調査を実施した。児童への調査内容は日本語版SPPCによる自己概念,健康状態,現在の経験や関心事,将来の希望,社会的支援,3つのお願いなどであり,両親への調査内容は価値観,子どものへの共感や責任,生きがいおよび自己概念などである。 結果;(1)面接した児童は男子13名,女子14名であり,平均年齢10.5歳(7〜13歳),平均発病年齢6.2歳(3〜12歳),平均HbA1c値8.7%(6.2〜11.0)であった。回答した両親は25名(母親13名,父親12名)であった。(2)7歳を除く26名の児童の自己概念平均は4点評定で学業能力2.9,社会的受容2.9,運動能力2.5,容姿2.6,行動2.6,自己価値(自尊心)3.0であり,いずれも中点以上であったが,自尊心が性別学年別標準値より低かった者は5名,19%であった。両親の自己概念総得点平均は父親が34.3(SD4.2,Range26-40),母親35.9(SD5.5,Range27-46)であり,東京都の標準値と差がなかったが,自己価値について否定的回答の父親12名中3名,母親13名中3名であった。(3)面接時の態度や病気に関する開示性から心理的不適応状態と判断される児童が3名いたが,彼らの自尊心は必ずしも低くはなかった。その理由についてさらに詳細な分析が必要である。 平成10年度の計画:平成9年度は内部疾患の児童を対象に調査を行なったが,平成10年度は外見的障害を伴う慢性疾患の児童とその両親を対象に同様の調査を行い,両群を比較検討し,健康障害のある児童の自己概念の特徴とそれらに関連する因子を特定して,彼らと家族に対する看護支援のあり方を考察する予定である。
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