Research Abstract |
慢性疾患をもつ子どもの自尊心とその関連因子を検討するために,昨年度は小児糖尿病児とその両親および主治医33組を対象に調査を実施したが,本年度は運動障害のある身体障害児とその両親34組を対象にした。本年度の障害児への調査内容は改訂日本語版SPPCによる自己概念,健康状態,現在および過去の経験や関心事,将来の希望,社会的支援,3つのお願いなどであり,両親への調査内容は価値観,子どものへの共感や責任,および養育観などである。 結果: (1)面接した児童は34名であり,平均年齢10.8歳,障害の原因疾患は脳性麻痺,筋ジストロフィ,骨形成不全,交通事故外傷後遺症などであったが,いずれも知的障害はなく,現在養護学校に在籍していた。発症年齢は0歳25名,1〜13歳6名,不明3名であった。回答した両親は20名(母親11名,父親9名)であった。(2)障害児の自己概念平均はSC2.7,SA3.3,AC2.6,PA2.5,BC3.0,S-W3.0であり,SA,PA,BC,S-Wの得点が標準値より有意に高く,IDDM群よりBC得点が有意に高かった。教師評定はSC2.8,SA2,.8,AC2.6,PK2.8,BC3.0であり,ACは標準値より有意に低かったが,PAは有意に高かった。(3)障害児の自尊心はPA.62,SC.54,BC.49,AC.48と有意な相関があったが,SAとはなかった。(4)自尊心が最も低かった事例は寮生活をしており,姉との関係が不良な4年生女子で自慢できるところは分からないと答えた。また母子家庭で母親は自尊心を育てる養育をしてない,この1週間本児を激励したり褒めたことがなく,子どもにとって重要なことは容姿であると回答した。 結論: 全体として養護学校に通う障害児の自尊心は健常児よりも高かったが,その理由は社会比較の対象者と防衛的高自尊心の可能性が考えられる。障害児の自尊心には日常生活の経験,家族との関係,両親の養育観やサポートの程度などが関連することが示唆された。
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