1998 Fiscal Year Annual Research Report
義歯装着者の咀嚼運動様式の解明と易咀嚼性食品のデザイン
Project/Area Number |
09680023
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
新井 映子 静岡大学, 教育学部, 助教授 (90134783)
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Keywords | 咀嚼運動 / X線映画撮影法 / 義歯装着者 / 口蓋床 |
Research Abstract |
本研究は,テクスチャーの異なるモデル食品を咀嚼する際の咀嚼運動をX線映画法によって記録し,義歯装着者に特有の咀嚼運動様式を解明することにより,義歯装着者にとって咀嚼しやすい食品のデザインを目指すものである.本年度は,義歯装着者の咀嚼運動様式を解明するために,顎口腔機能に異常が認められない健常者ボランティアの硬口蓋を口蓋床で被覆して擬似的な義歯装着状態を創出し,口蓋の被覆が咀嚼運動様式にあたえる影響を,X線映画撮影法を用いて明らかにすることを目的とした.その結果,硬さの異なるゼリーを咀嚼させた時,いずれの硬さにおいても,口蓋床を装着した場合には,食品の捕捉から粉砕開始までの時間の延長,咀嚼回数の増加および嚥下開始までの時間の延長が観察された.さらに,食品の粉砕方法を圧縮から咬断へと変化させるのに必要な硬さの閾値が低下した.一方,ゼリーよりも硬いクッキーを咀嚼させた場合には,口蓋床の有無による咀嚼運動様式の違いはほとんど認められなかった.以上の実験結果より,義歯装着者に特有の咀嚼運動として,以下の事項が明らかになった.すなわち,口蓋床装着者では,特に軟らかい食物を咀嚼する際の咀嚼運動様式が変化した.この変化は,口蓋床によって摂取食品のテクスチャーを認知するべき切歯乳頭部近傍が被覆されたことにより,摂取食品のテクスチャー認知機構が阻害されたことによると推察された.以上の結果より,義歯を装着した高齢者にとって望ましい食品とは,口蓋床を介してもテクスチャーが認知しやすいように,特に軟らかい食品では,必要以上に軟化させないことが肝要であると考えられた.
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