1997 Fiscal Year Annual Research Report
抹茶特有の風味が生じるためには,なぜ碾茶を熟成保存する必要があるのか
Project/Area Number |
09680031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
島田 和子 山口県立大学, 家政学部, 教授 (70145936)
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Keywords | 抹茶 / 熟成 / カテキン類 / テアニン / カフェイン / 遊離糖 / ビタミンC / クロロフィル |
Research Abstract |
抹茶は,5月の新茶(碾茶)を約半年間位,冷暗所に熟成保存した後,粉末化した方が抹茶らしい風味が増すが,その理由は明かではない.そこで本年度は,碾茶保存による抹茶溶出成分中の各種呈味成分量の変化を明らかにし,それらの成分が抹茶の風味にどのように影響しているかを検討した.さらに抹茶らしい風味の生成(熟成)に酸素が必要かどうかについても検討した.製造直後(5月)の碾茶を含気包装と窒素充填包装条件の下で,10°C,6ヶ月間熟成保存させ,1ヶ月毎に碾茶を採取し,茶臼にて抹茶とした.各熟成期間の抹茶試料を用いて抹茶溶出液(85°C)を調製した。 碾茶保存による茶葉の劣化度の指標として,ビタミンCとクロロフィル含量を測定したところ,ビタミンCは熟成期間中多少減少し,クロロフィル含量は変化がなかった.従って,碾茶保存により茶葉の劣化は生じていないことが認められた.抹茶の官能評価では,碾茶を含気包装で6ヶ月間保存して調製した抹茶の方が保存しない碾茶から調製した抹茶より,うま味・あま味があり,渋味・苦味が抑えられ,まろやか感があるという評価が得られた.また,碾茶を6ヶ月間保存した場合,窒素充填保存した抹茶と比べ,含気保存した方が抹茶らしい風味があると判断された.抹茶の渋味・苦味成分であるカテキン類の溶出量は,含気保存,窒素充填保存ともに保存期間が長くなるにつれて僅かに減少した.苦味成分のカフェインとうま味・あま味成分である遊離アミノ酸・テアニンの溶出量は包装条件に関係なく一定であった.あま味成分の遊離糖の溶出量は,窒素充填包装では一定であったが,含気保存では多少減少した.以上の官能評価結果と溶出液中の各種呈味成分量とは必ずしも対応しないことから,含気保存による抹茶の風味の生成には他の要因があることが認められた.
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