1997 Fiscal Year Annual Research Report
選手と支援スタッフとの関係に関するバイオエシックス的研究
Project/Area Number |
09680082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 良亨 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (00153734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友添 秀則 香川大学, 教育学部, 教授 (90155581)
片岡 暁夫 筑波大学, 体育科学系, 教授 (40015821)
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Keywords | スポーツ倫理学 / 自己決定 / パタ-ナリズム / 弱者と強者 |
Research Abstract |
この研究は平成9年度〜平成11年度の3年間にわたる研究である。平成9年度は,研究の最初の年度にあたり、主として「選手と支援スタッフの関係性」「バイオエシックス」に関する資料収集を行った。資料の本格的分析は,次年度以降に行うが,「選手と支援スタッフの関係性」の先行研究では,選手と支援スタッフの関係は従-主関係である。つまり,選手が弱者であり,支援スタッフ,特に監督やコーチが強者という図式に基づいて指導が展開されている。そこでは支援スタッフの極度のパタ-ナリズム意識が根底に流れている。このような関係は,指導場面だけに通底するのではなく,指導場面を超えた日常生活場面にまで貫通している。それは支援スタッフが選手を被験者とした研究に参加させる事例に象徴される。選手と支援スタッフ間の絶対的関係性に依拠し,支援スタッフが選手そのものを拘束・管理している可能性が示唆された。弱者と強者という関係性が存在する場合,強者に高い倫理性が求められ,同時に強者には「厳格責任」や「安全提供義務」を負うのが一般の社会規範である。だが,体育・スポーツの世界ではそうした認識は希薄であり,弱者である選手たちは,何ら批判的眼差しをもたず,全面的,盲目的信頼を支援スタッフに与えている。現状では選手自身が自己決定を行わず,支援スタッフによる他者決定が優勢と判断される。詳細な検討は次年度とするが,「バイオエシックス」の視点からは重大な問題が包摂されており,選手と支援スタッフとの望ましい関係性を確立には,体育・スポーツ世界における新たな倫理規範の提示が必要である。その意味からも,次年度の「バイオエシックス」の思想背景,諸原理,諸理論の分析が不可欠であろう。
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