1999 Fiscal Year Annual Research Report
選手と支援スタッフとの関係に関するバイオエシックス的研究
Project/Area Number |
09680082
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 良享 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (00153734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友添 秀則 香川大学, 教育学部, 教授 (90155581)
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Keywords | バイオエシックス / インフォームド・コンセント / 非対称的人格関係 / 第三者審査機関 / スポーツ倫理学 |
Research Abstract |
スポーツ科学は、特定のスポ一ツ種目に適するよう、意図的に選手の精神・身体を改造する。現状では、世界一流選手に様々な人々が関与し、監督・コーチを筆頭に、メンタル、フィジカル担当のスタッフが有機的連関の下に支援している。本研究は、我が国における選手と支援スタッフとが伝統的に非対称的人格関係にあることから、両者の関係をどのように調整するかというバイオエシックスの視点から研究が進められた。 3年間の関係資料の分析の結果、以下の諸点が明確にされた。(1)医療現場における患者と医師関係と選手と支援スタッフ関係に構造的な類似・相似性があり、バイオエシックス(生命倫理学)の諸原則の適用可能性が示唆された。(2)同時に、医科学研究からスポーツ指導や科学研究への応用が増加し、医療現場における患者と医師関係の決定主体移行の思潮を、スポーツ指導、科学研究にも導入されるべきと考えられた。(3)従来の人間(ヒト)を対象とする専門職倫理(ヒポクラテスの誓い、ニュールンベルク倫理綱領、ヘルシンキ宣言)に基づいて、「インフォームド・コンセントの原則」の徹底が求められたが、スポーツ指導、科学研究においては、未だ具体的で、実質的なガイドライン、倫理綱領等の制定が遅延し、制度的に不備であると判断された。(4)さらに閉鎖的なスポーツ指導、研究環境を監視する上でも、「開放性の原則」を導入して、第三者の審査機関の創設が不可避と判断された。 この研究を通じて、我が国における選手と支援スタッフの非対称的人格関係を、制度的に是正するシステムを導入しなければ、選手の人権が十分に保証できないだけでなく、スポーツ文化の荒廃危機も招来すると結論づけられた。
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Research Products
(1 results)