1999 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツと法に関する研究-日米のスポーツ関連紛争、訴訟の比較検討-
Project/Area Number |
09680107
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
井上 洋一 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (10193616)
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Keywords | スポーツ法 / ドーピング / プライバシー権 |
Research Abstract |
アメリカの体育・スポーツにかかわる紛争及び訴訟のうち、今年度はスポーツ参加に関する事例とりわけドーピングテストに関わる事例を検討することであった。ドーピング問題は国際的にもスポーツ界の最重要事項であり、ドーピングテスト(アメリカではドラックテスト)に関わる法的検討は、スポーツの公平性、安全性にとっても大変意義がある。 選手の権利意識が高いアメリカでは、訴訟を通してこのテストの合法性そのものが問われている。そこで重要な争点となったのは、「不法な捜索及び押収を受けない権利」と「プライバシーの権利」という合衆国憲法及び州憲法上も認められる個人の基本的権利が侵害される可能性があるという点であった。したがって、テストによって保護される公の利益と個人の持つ基本権とのバランスの問題として捉えられる。たとえば、大学スポーツに関するカリフォルニア州の訴訟では、全米大学競技協会(NCAA)の検査プログラムがいくつかの点から、プライバシー権を侵害していると判示された。しかしながら、1980年代に州裁判所の第1審及び第2審で支持されたこの判断は、1994年のカリフォルニア州最高裁判所で逆転し、テストによって守られる公の利益が認められている。この最高裁判所の判断は、その後の同様の訴訟に大きな影響を与えたと言える。また、十分な説明の機会や情報の厳密な管理など付随した問題として指摘される。
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