Research Abstract |
【目的】 これまでに種々の水温,運動強度での水泳中の体温上昇,発汗量等について検討した結果,特に運動強度と体温上昇,体液浸透圧調節の点から無視できない程度の発汗量の増大が認められた.さらに,昨年度は水泳中の自由飲水が過度の体温上昇を抑え,インターバル泳で高いパフォーマンスを維持できることを報告した.本年度は,水泳鍛練者を対象に人工気候室内にて両下肢を循環温水に浸水負荷し,発汗誘発刺激とし,下肢温浴時の体温と換気カプセル法による局所発汗量を測定した.温熱負荷時後の発汗潜時および温熱負荷による局所発汗量を陸上種目選手のデータと比較検討し,水泳選手の体温調節反応の特性を検討した. 【方法】 対象は大学男子水泳選手13名(S群)および水泳以外の大学男子競技者14名(O群)であった.実験は,室温26.0℃,相対湿度33.0%の人工気象室内にて,30分から1時間の安静後に発汗誘発刺激として両下肢を43.0℃の循環温水に30分間浸水させた.前胸部・腹部・大腿部・前腕部の局所発汗量を容量式湿度計(H211,Technol Seven)-換気カプセル法にて,また,鼓膜温,口腔温および皮膚温(胸部・腹部・大腿部・前腕部・背部)をサーミスタセンサにて測定し,30秒ごとにデータをパーソナルコンピュータに取り込んだ. 【結果】 胸部の発汗潜時は両群とも被験者間にかなりの個人差があり,水泳選手で12.35±4.30min,その他の選手で10.93±4.08minであった.部位別では,両群とも胸部,腹部,大腿部,前腕部の順で長くなり,体幹部に比べて四肢,特に前腕の発汗開始が遅れる傾向を示した.局所発汗量はS群,O群でそれぞれ,胸部で7.68±2.57mg/cm^2,9.26±3.96mg/cm^2,腹部で5.53±3.02mg/cm^2,8.90±3.44mg/cm^2,大腿部で3.13±0.71mg/cm^2,4.41±1.20mg/cm^2,前腕部で3.62±1.78mg/cm^2,4.83±2.75mg/cm^2であり,胸部以外の部位においてO群が有意に多かった.また,部位別では(胸部=腹部)>(前腕=大腿部)で躯幹部の発汗量が有意に多かった.浸水前後の鼓膜温上昇は水泳選手0.26±0.19℃,その他の選手0.15±0.26℃で両群間には有意な差を認めなかった.また,発汗開始時および浸水前後の平均皮膚温,平均体温においても両群間に有意な差異は認められなかった.
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