1998 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツ指導における「ワンポイントアドバイス」のバイオメカニクス的検証
Project/Area Number |
09680122
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Research Institution | International Budo University |
Principal Investigator |
大道 等 国際武道大学, 体育学部, 教授 (90152248)
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Keywords | バイオメカニクス / 指導法 / ソフトボール / 言語指示 / ワンポイント・アドバイス / 間主観性 |
Research Abstract |
1998年の日本体育学会バイオメカニクス分科会や日本バイオメカニズム学会で、私とその共同研究者は大学体育授業におけるソフトボール初心者指導の「言語指示」に関して口頭発表した。概要を端的に纏めれば、右利き打者の場合「スウィング中は右足を地面から絶対離すな」という威圧的なまでの強要によって、初心者は初級中級者的動作に容易に変化した、という発表内容である。授業中にスキルが確実に向上した写真と、しかし実はバッティングのフォロースルー後半で右足が地面から離れている事態をも同時に示した。すると、地面から右足が離れているという事実と言語指示は矛盾するという強い批判があった。さらに、打撃理論からすれば「右足を絶対離すな、は明らかに間違いである」という意見もあった。学会員諸氏は客観性を固持する人が多い、との印象をもった。 ここでの主張であり結論を一言で言うなら「スキル指導では主観を金科玉条の第一義に置き、客観的事実は課題達成という一事があるのみで、それに至るプロセスにおいては客観性など二次的意義しか持たない」ということであり、もっと短く言うなら「間主観性を尊重しよう」ということである。 「間主観性」とは、もともとは現象主義哲学の概念である。しかしここに、スポーツ科学のスキル論でそれを私が以下のように流用しようと提案する。「スキルやコツなどの身体動作を指導矯正する文化伝達の場面において、コミュニケーションの内容が客観的事実に反していようとも、指導者の意図が結果的に被指導者へ正しく伝達され得ている事態を、間主観性が存在していると言うことにする。」
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