1998 Fiscal Year Annual Research Report
ジェンダーの視点からみた都市内部の住宅市場と住宅探索行動
Project/Area Number |
09680165
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Research Institution | TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
若林 芳樹 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (70191723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影山 穂波 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助手 (00302993)
矢野 桂司 立命館大学, 文学部, 助教授 (30210305)
由井 義通 広島大学, 教育学部, 助教授 (80243525)
神谷 浩夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (40192546)
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Keywords | ジェンダー / 住宅供給 / 居住地移動 / 行動地理学 / 東京大都市圏 / 単身女性世帯 |
Research Abstract |
需要サイドに重点を置いた昨年度の調査結果を受けて、今年度は供給サイドに関する実態調査を行い、住宅市場の全体像の把握に努めた。また、前年度に収集したデータの分析も継続して進めた結果、以下のような知見が得られた。 (1) 供給サイドについては、公的部門と民間部門の両面から単身女性向け住宅供給の実態を把握した。公的部門については、公営住宅は本研究の対象者層は入居が困難なため、住都公団で資料収集を行った。その結果、1977年から公団住宅への単身者の入居が可能になり、最近では女性向けの設計に力を入れてはいるものの、狭小な新規募集物件だけが対象になるため、単身女性のニーズの高い都心周辺部での供給は少ないこと、またそうした狭小な住宅では公庫融資も受けにくいといった制約があることが明らかになった。一方、民間部門については、不動産仲介業者とディベロッパーへの聞き取り調査を行った。その結果、単身女性のニーズを反映して、利便性の高い都心周辺部での女性向けマンションの供給が増加し、住宅市場では単身女性が重視されつつあることがわかった。 (2) 需要サイドについては、昨年度に行ったアンケート調査結果に、グループインタビューと個人面接調査の結果を加えて、多面的な分析を行った。その結果、対象となった30歳代の単身女性の場合、将来の見通しが不透明であるため、短期的視野で居住地を選択していること、その結果選ばれる住宅も勤務先との近接性や安全性が優先されること、住宅購入に当たって名義や保証人の面でジェンダーに関わる問題を抱えていること、などが明らかになった。また、同じ年齢層でもより深刻な問題を抱える母子家庭については、母子支援施設への聞き取り調査を行い、そうした施設がジェンダーに由来する種々の問題に遭遇した女性たちにとって一次的な避難所になっていることがわかった。 (3) 以上のような住宅の需要・供給による結果としての、単身女性の地域的分布状況をGISを用いて統計的に解析した。その結果、東京圏で30代の単身女性の居住地は区部の西側に集中し、臨海部に多い単身男性とはやや異なる分布を示すこと、また年齢が40代になると分布域が分散することなどがわかった。さらに、小地域統計を用いてミクロに分析すると、対象者層は駅や鉄道沿線に近い、利便性の高い地域に集中することなどが判明した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 神谷浩夫・影山穂波・木下礼子: "東京大都市圏における単身女性の居住地選択" 金沢大学文学部地理学報告. 9号印刷中. (1999)
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[Publications] 由井義通: "大都市郊外地域におけるサブマーケット別居住者特性" 立命館文学. 553号. 1065-1087 (1998)
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[Publications] 影山穂波: "ジェンダーの視点から見た港北ニュータウンにおける居住空間の形成" 地理学評論. 71巻9号. 639-660 (1998)
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[Publications] 若林芳樹: "多摩ニュータウンにおける住民意識からみた居住環境評価" 理論地理学ノート. 11号. 1-21 (1999)
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[Publications] 神子島寛章・矢野桂司: "立命館地理情報システム(RGES)を用いた京都市域のデジタル社会地図" 京都地域研究. 13巻. 61-91 (1998)
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[Publications] 由井義通: "地理学におけるハウジング研究" 大明堂, 372 (1999)
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[Publications] 矢野桂司: "地理情報システムの世界" ニュートンプレス, 250 (1999)